2024年11月27日( 水 )

日本への関心が深まる中国、注目されるのは「日本の利点」

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 今回の中国出張は、2月24日に東京を離れてから3月15日に帰ってくるまで、3週間という長さになった。
 この3週間で、私は福建省厦門市、四川省成都市、山東省済南市、そして北京を回った。半月にわたる全人代会議の取材以外に、5回の講演を行った。この5回の講演内容は以下のとおりである‥厦門の不動産開発企業「滕王閣」の主催する「真実の日本」、中国公益研究員主催の「日本のトイレ文化」、日本貿易振興機構北京代表部による「日本人の企業経営方法」、首都師範大学の「日本の新聞報道の現状」、そして中国社会科学院の主催する「安倍政権と日本社会」。

 5回の講演への参加者は800人を超えた。そのうち中国社会科学院の講演は合計3時間半にわたり、話題は日本の政治、経済から文化にまで及ぶもので、参加者は研究者や博士課程の学生ばかりであった。また、北京で出版した新刊「日本人の生き方」は、第一版の1万冊が1か月もせずに売り切れてしまい、第二版で1万冊の増刷となった。出版社では今年中に10万冊は売れると見込んでいるという。同時にこの本は台湾・香港でも出版されることになった。中国各層の日本を理解したいという情熱が証明されたといえるだろう。そして中国人のこういった情熱は、日本の良い面を理解したいという方向に向けられている。これは日本社会が中国を理解する目的――中国の問題を理解したがる点とは異なっている。

 日中両国の注目するポイントの違いは、このような結果を生み出している。2016年、中国人の訪日観光客は600万人を超えたが、中国を訪れる日本人は220万人に減っている。これが更に意外な効果を呼ぶこととなった。3月15日(消費者権利デー)、中央テレビ局が無印良品の店舗での検査を放送したところ、一部の食品が東京からの輸入品であることが判明した。中国政府は国民の健康を守るために、未だに東京を「核放射地域」に分類している。そのため、テレビ局は「日本の放射能汚染食品が中国へ輸出されている」と断定した。この番組が放送されると、中国社会に大きな反響と不安を呼んだ。特に日本の食品を購入していた中国人は、食品の摂取による放射能の影響を心配した。まずネットからデマが訂正されはじめた。日本へ旅行したことのある中国人ネットユーザーは自らの経験をもとに、中央テレビ局の報道は偏向的な誤報であるとしたのだ。普通の中国人が日中友好のためにしている努力に対し、日本社会も理解と肯定を送るべきだろう。

 今回の中国出張は、主に中国全人代および政治協商会議(通称「両会」)を取材するのが主な目的であった。「両会」は年に一度の通常国会であり、5,000名あまりの代表者、委員(国会委員に相当)が全国各地から北京の人民大会堂に集まり、国家について討論する。この中で、注目に値するデータがいくつかある。

 2017年、中国のGDP成長率は6.5%にまで下がった。ここから分かるのは、中国経済はいまだに大きな困難に面しているが、中国政府が大規模な貨幣発行、公共投資の拡大などの方法で強制的に経済を促進していないということは、中国の経済運営が成熟し、自信をつけてきているということだ。

 そして2017年の防衛経費の支出額は予想より低く、2016年の7.6%に対して7%にとどまった、トランプ政権の12%の増加率と比べると、中国の防衛経費は安定に向かいつつあり、経済発展の現状とバランスが取れていると言えるだろう。

 2017年のもう一つの注目すべきデータは、大学生795万人、専門学校生500万人の卒業後の就職を手配するということだ。中国政府にとってみれば、これは大きなストレスになるはずだ。よって、6%以上という中程度の経済成長を維持することも、中国政府にとっての長期的な任務なのだ。我々もここから中国政府が「安定」を強調する根本的な原因が理解できるだろう。

 「両会」は今年最も重要な政治会議ではない。秋の中国共産党第19回全国代表大会こそが本番だ。4年余りにわたる政治の整頓を終えて、中国の政治は明るく澄みはじめている。習近平政権はここから政権の重点を経済の発展に移すとみられ、5年後の中国に対する期待が満ちている。党大会の時期には再度北京での取材を行う。

<プロフィール>
jo_pr徐 静波(じょ せいは)
政治・経済ジャーナリスト。(株)アジア通信社社長兼『中国経済新聞』編集長。中国浙江省生まれ。1992年に来日し、東海大学大学院に留学。2000年にアジア通信社を設立し、翌年『中国経済新聞』を創刊。09年に、中国ニュースサイト『日本新聞網』を創刊。著書に『株式会社 中華人民共和国』(PHP)、『2023年の中国』など多数。訳書に『一勝九敗』(柳井正著、北京と台湾で出版)など多数。日本記者クラブ会員。経団連、日本商工会議所、日本新聞協会等で講演、早稲田大学特別非常勤講師も歴任。

 

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