『創業の原点に返れ』飯田建設と福岡・九州の土木の歩み(4)
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大規模工事の実績を重ねる
昭和40年中盤、飯田建設は、九州地方建設局の直轄事業である熊本県人吉市大畑町からえびの市の牧ノ原までの20kmの改良工事である国道221号線“加久藤越え”を受注した。人吉国道大畑跨道架設工事、えびのループ橋床版工事を筆頭に、10年間で16件もの工事契約があり、請負金額の総計は8億5,000万円となった。この工事には現在のスーパーゼネコン・中堅ゼネコンが参入しており、大規模な事業であった。その大手系のゼネコン各社と肩を並べて施工に当たることができたのは、同社にとって大変意義深いものであった。
土地造成においても大型受注として、多田羅土地区画整理1工区・2工区本工事で現在の福岡市東区若宮1〜3丁目、八田3丁目のエリアである。総面積20万坪で69年12月から74年2月までの工期で請負金額5億4,014万円。福岡市周辺の造成工事において当時では最大級であった。そして、昭和50年代に突入。当時はオイルショック直後で世界的な経済危機の状況であった。一方で、北九州モノレールや福岡市の地下鉄工事の着工、福岡都市高速道路の整備によって都市圏が大きく進化していた。山陽新幹線の博多駅開通、九州縦貫高速道路の熊本〜福岡〜古賀間の開通、沖縄国際海洋博覧会の開催など、福岡と九州が新たな時代に入った時期であった。そのような時代に、同社は技術革新を推進し、安定した成長戦略を進めた。まずは、下水道推進工事である。75年10月に熊本県山鹿市から公共下水道管渠築造工事を1億137万円で受注した。工事の概要は、延長1,290mそのうち推進部は48m(φ700およびφ800)の刃口推進工法であった。実績が認められ、次々に同市内の推進工事を受注し、実績を積み上げた。79年4月の福岡市水道局発注の比恵地内φ700配水管敷設工事(瑞穂交差点)では圧気推進工法を採用。その後、福岡市水道局、熊本県荒尾市、宮崎市、日本下水道事業団などから推進工事を受注。安全面やコスト面を考え、各所の状況にあったフレキシブルな施工方法を採用した。
創業30周年の記念事業
75年11月に福岡北九州高速道路公社から高架橋床版工事を受注(請負金額 9,459万円)。さらに休眠状態であった港湾部を復活させるため、飯田代表は九州大学の井島武士教授と産学協同による新たな工法の開発に着手。77年はじめに“パーホーセル工法”が完成。同工法は特許出願され、81年に特許として登録された。日本をはじめアメリカ、イギリス、シンガポール、台湾、韓国にまたがる海外特許であった。同工法は、82年の九州地方建設局発注の国道10号別府弁天地区道路護岸工事を皮切りに、福岡・九州地方各所の港湾の護岸工事に採用され、韓国と台湾でも実績を作り上げた。また、ゼネコンからの依頼でブロック製作を手がけ、その過程で83年に“ユークロス工法”を開発。これら2つの工法により、港湾分野でも同社は優れた技術力を示したのであった。
80年9月着工の川内トンネル新設工事は、同社が初めてトンネル工事を受注した案件であった。その後鯛生〜菊池線の竜門トンネル、中河内トンネル工事を手がけた。
新たな分野への進出や従来の事業の再興など、技術革新を進めて総合建設業として地域の発展に貢献してきた同社は、81年6月1日に創業30周年を迎え、その記念として福岡市民の森に身障者福祉を目的とした油山キャンプ場を寄贈し、工事を行った。当時、記念パーティを取りやめ、同キャンプ場を寄贈することは全社一致で即決されたという。
(つづく)
【河原 清明】
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