『食』を通じて熊本復興に臨む~RESTART KUMAMOTOの挑戦(後)
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RESTART KUMAMOTO
熊本地震からまもなく1年。さまざまな復興イベントやボランティア団体が活躍するなか、熊本の“食”を通じて中小企業の復興復帰を目指すプロジェクト“RESTART KUMAMOTO”も奮闘している。同プロジェクトでは、熊本の中小食品企業同士が個人ではなくチームとして活動を行い、熊本復興のために何をするべきか何ができるのか、どのような課題があるのかなどを皆で共有して活動するプロジェクトである。――同プロジェクトのプロデューサーであり、流通コンサルティング業「ITOU企画」の代表である伊東正寿氏にお話しを伺った。
【聞き手:中尾 眞幸】
故郷の復興に向け、1歩ずつ進む
――RESTART KUMAMOTOでは、熊本の復興支援のために熊本の食材を全国に発信していくとのことでした。
伊東 一過性の復興支援ではなく、中長期的に熊本を盛り上げていくには、人々の日常消費に入り込むことが大事です。熊本だけでなく、九州産の食品は味やデザイン性など、全国的に見てもレベルが高い。全国の消費者に自信を持って手に取っていただける品質なのです。しかし現状、全国に商品を売り込んでいくには、価格や物流などの問題が存在します。その問題の解決には、行政と一体になって取り組む必要があります。行政の力は大きいです。官民一体で商品開発・販売や物流・配送の問題が解決すれば、全国進出の可能性は非常に広がると思われます。
また、ドラッグストア、ディスカウントストア、ネットの台頭により、ナショナルブランド(知名度のあるメーカーが製造する、消費者に認知度の高い商品)は消費者に価格でしか選ばれなくなっているため、百貨店やスーパーマーケットは新しいものを求めています。先程申し上げた通り、熊本には品質が高く、まだまだ知られていない商品がたくさんあります。その意味でも、我々の活動を通して熊本の商品をバイヤーさんたちに提案していくことで、県外に売り出していける可能性があると考えています。
――今後はどのような活動をされていくのでしょうか。
伊東 人数や時間の制約もあるため、我々だけでできる活動や復興支援は限られています。そのため、「すべての熊本企業・熊本県全域を復旧・復興させる」というよりも、まずは「復興の可能性の高い業者さん・産地」を集中して応援していきたいと考えています。全体を引き上げようとするよりも、まずは成功のモデル例を作っていく時期ではないでしょうか。極端にいえば、1社だけでも売上げが数倍に伸び、元気になる。その様子に、周囲の地元企業も元気づけられ、「自分たちも頑張ろう」と感じる。そうやって全体が盛り上がっていくのかなと。我々の役目は成功を1事例、2事例と作り、他の人に可能性を感じてもらうことだといえるでしょう。
成功事例を増やすためにも、我々も新しい取り組みを行っていかなければなりません。熊本地震の風化が進むなかで、これから“どんな見せ方をしていくのか”、“何をリスタートさせるのか”という考えをさらに高めていく。また、前述している通りスーパーマーケットも新たにリスタートしていく。そのことに対しての企画提案活動だったり、プロジェクトの賛同者を増やすことで、RESTART KUMAMOTOの活動を大きくし、もっとたくさんの方々に熊本のことを知っていただきたいですね。1人でも多くの方に、熊本の食を通じて熊本の良さを伝え、少しでも中小企業や生産者の活気付けを行うことができれば、我々のプロジェクトは成功したといえるのです。
(了)
【文・構成:中尾 眞幸】
<プロフィール>
伊東 正寿(いとう・まさとし)
1967年3月、大分県生まれ。熊本県在住。(株)寿屋に約10年間勤め、デイリー・グロサリー担当、本社企画担当などを経験。その後(株)ハローデイに入社、商品部にてバイヤーリーダーを務める。2010年10月、ITOU企画を設立。培った経験を活かし、九州の食品流通コンサルタントとして九州内のバイヤーや商社に企画提案などを行う。また、バイヤー、商社向けのオリジナルセミナーなども複数開催する。関連記事
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