2024年12月22日( 日 )

スペースワールドの跡地にイオンが複合施設~シンボル再建は市を繁栄に導くか

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 今年12月に閉園する北九州市のテーマパーク「スペースワールド(SW)」跡地の活用について、地権者の新日鉄住金はイオンモールと優先的に交渉する方針で進めていることを、25日の中間報告で北九州市と福岡県に明らかにした。イオンモールは、ショッピングセンター、エンターテインメント、カルチャー、食を融合した「これまでにない新業態の施設」を検討する意向を示している。SWにはイオンモール八幡東(延床面積:67,579m2)が隣接しており、新施設と一体的に運営すれば全国で最大級規模の施設となる。新たなランドマークとして国内だけでなく、海外客を集め市の活性化を図る。同市の北橋健治市長は会見で「市全体のにぎわいを作り、活性化に繋がるような土地利用を要望したが、一定の配慮をいただいた」と評価した。

 大型の商業施設の進出は、地元の小売業や商店街に打撃を与える可能性がある。新施設はアウトレットモールを核とした施設になるという見方もあり、そうなれば小中規模の商店だけでなく、百貨店などへの影響も避けられない。北橋市長は周辺の商業施設への影響に関しては「市全体の小売業の発展に向けて検討していきたい」と述べるに留まっている。今後、市民の懸念解消と意向を汲むためにも、同市と福岡県、新日鉄住金、イオンモールの4者で協議会の場を設けるとのこと。

 地元では企業経営者らがSWの存続を求める署名活動を進めており、今月27日に約3万8千人分の署名を市に提出する予定となっている。
 4者協議会での方針次第では、市民らとの意見が対立する可能性も考えられる。イオンモールの方針について「市に一定の配慮をいただいた」とする北橋市長だが、全国規模の企業に手綱を握られたまま計画が走れば、市の観光客増などが叶ったとしても、大半の市民には恩恵がもたらされず、反発を招く恐れがある。
 新施設による市の繁栄か、はたまた行政と市民の分裂か――。北九州市のシンボルの再建であるだけに、その行方は予断を許さない。

【中尾 眞幸】

 

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