商工中金の不正融資~改善命令を検証する(後)
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不正融資に走った商工中金の経営体質とは
危機対応業務の「災害復旧資金」と「経営環境変化対応資金」は、政府系金融機関である商工中金と日本政策投資銀行だけが独占的に取り扱うことができる国の制度融資。民間金融機関では考えられないが、商工中金が融資する貸出金を支店数が少ない日本政策金融公庫が7~8割を保証し、保証料を稼ぐもたれ合いの仕組みとなっている。
商工中金にとっては焦げ付きを心配しなくて済むうえ、補助金ももらえることから、甘い蜜を求める蜂のように不正融資に走ったとみられる。下記の経営成績を見ていただきたい。昨年1月29日に日銀が導入した「マイナス金利政策」の影響を受けて、商工中金の収益力は大きく減少しているのがわかる。一方、日本政策金融公庫は調達資金の「借用金」の金利低下により、大幅な増益となっている。
商工中金にとってさらに厳しいのは、「ワリショー」「リッショー」などの債券の発行が中止となっており、今後は自前で預金を集めなくてはならない状況にあること。そのため、この制度融資が“収益を生む大きなチャンス”と映ったのではないだろうか。
一方、収益力がある日本政策投資銀行が、不正融資したとの話は聞こえてこない。明暗を分けたトップ2人の天下り人生
日本政策投資銀行の柳正憲社長は1974年に東大教養学部を卒業し、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)に入行。2015年6月26日、社長に就任しており、前身の日本開発銀行の時代も含めて、生え抜きの行員がトップになるのは初めてとなった。
一方、商工中金の安達建祐社長は77年に東大法学部を卒業し、通商産業省に入省。11年8月に経済産業省事務次官に就任した。その後、13年6月に退官後、日本生命特別顧問、旭化成取締役、東洋エンジニアリング取締役などを歴任し、16年6月23日に商工中金の社長に就任した。
社長就任からわずか1年足らずの今月9日、宮本聡中小企業庁長官は、安達健祐社長を経産省に呼び、業務改善命令書を手渡した。
宮本長官は「徹底的に問題を洗い出して、根本原因を特定してほしい」と要請。安達社長は「命令を重く受け止めて調査を継続し、全容解明に努めます」と、同じ東大法学部卒で8年後輩にあたる宮本長官に深々と頭を下げた。
金融の自由化により厳しい経営環境にあるなか、さらに不正融資問題で揺れる商工中金は、安達社長にとって決して良い天下り先ではなかったようだ。(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】▼関連リンク
・商工中金の不正融資、九州では4支店24人が関与
・商工中金の不正融資、行政処分へ
・不正融資問題の商工中金に業務改善命令※クリックで拡大
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