加計学園問題という「日本の美しき縁故主義」(1)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦
安倍晋三首相の30年来の友人(「腹心の友」)である加計孝太郎理事長が経営する、学校法人「加計学園」をめぐる問題が国会を騒がせている。野党側は、安倍首相が国家戦略特区という規制緩和の仕組みを使って、加計氏が経営する学校法人が獣医学部を新設しやすいように便宜を図ったと追及しているが、安倍首相はこの学部新設はあくまで「岩盤規制の突破」という公益を実現したとして譲らない。
国家戦略特区の決定は、内閣府に設置された国家戦略特区諮問会議で決まる。議長を務めているのが総理大臣である安倍首相で、根拠法は2013年12月に制定された「国家戦略特別区域法」である。早い話が、日本列島の何処かの地域を特区に指定して、その場所だけは大幅な規制緩和を行っていこうという趣旨の制度だ。
今、加計学園問題の舞台になっているのは、数ある中の「広島県・今治市」特区。愛媛県今治市で加計グループの岡山理科大学の獣医学部新設の話が進められている。問題は同大学を運営する加計学園の理事長の加計孝太郎氏が、安倍首相の1977年からの米国の大学への留学時代以来の友人であり、頻繁に食事やゴルフをするパトロン関係だったことだ。「文藝春秋」(2017年5月号)のジャーナリストの森功氏のレポートによると、「加計が安倍に声をかけ、それに応じるかっこうで盟友関係がのちのちまで続いた」といい、一時期、遊び金を安倍首相は加計氏にかなり頼ったという。国会審議で明らかになったが、安倍首相は国会議員になってすぐの頃に加計学園の監事も務めて報酬も受け取っている。
いわば、安倍首相と加計氏は「持ちつ持たれつ」の関係だったようで、森氏のレポートによると、2003年に銚子市にある千葉科学大学という大学のキャンパスの用地取得を巡って、地元と揉めた時、安倍が間に入って解決した事もあったという。
その加計氏が獣医学部について興味を持ったのは、もう十年以上前だという。加計氏が次男の悟の鹿児島大学共同獣医学部(旧・鹿児島大学農学部獣医学科)の入学式で附属病院などを見たときに、獣医学部にいたく関心を持ったという。この次男は、加計学園グループの倉敷科学芸術大学で講師を努めているが、同大学のサイトによると、鹿児島大学の学部は2006(平成18)年に卒業している。
このころから加計氏は獣医学部にビジネスチャンスを見出して、働きかけを始めたようだ。そこで加計氏が注目したのが、過疎に苦しむ今治市だったわけだ。2007年11月から14年11月まで、今治市と愛媛県は従来の「構造改革特区制度」を利用し、15回に渡って獣医学部の設置認可を申請してきたが、獣医の数は足りているということで認められてこなかった。
ところが安倍政権になって、従来の地方からの提案型の構造改革特区に変わる「国家戦略特区制度」ができたことで、トップダウンの意思決定ができるようになり流れは変わった。2015年12月15日に、今治市は国家戦略特区に指定されて、獣医学部新設に再度挑戦することになった。ところが、翌年の3月に京都府と京都産業大学が加計学園と同じように獣医学部の新設を提案した、加計学園と競合するようになったわけである。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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