政治経済学者 植草一秀
第二次大戦での日本敗北の日は1945年9月2日。東京湾内の米戦艦「ミズーリ号」甲板で降伏文書に調印が行われた。日本はポツダム宣言を受諾して敗戦文書に調印した。
ポツダム宣言第13項に次の規定が置かれた。
十三 吾等は、日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す。右以外の日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす。
ポツダム宣言が発せられたのは1945年7月26日。連合国は、ポツダム宣言第13項で「日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言」することを要求し、「右以外の日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす」とした。
日本政府はポツダム宣言を直ちに受諾しなかった。受諾したのは8月14日。ポツダム宣言受諾が8月15日に国民に公表された。8月15日に天皇によるポツダム宣言受諾の音声が国民に公表された。日本の敗戦が正式に決せられたのは9月2日の降伏文書への調印による。したがって、メモリアルデーとすべきは9月2日であって8月15日ではない。8月15日をことさらに強調することは天皇の戦争責任の論議を呼び起こすことになる。
日本政府がポツダム宣言を直ちに受諾していれば広島、長崎への原爆投下はなかった。ポツダム宣言受諾が遅れたために2発の原爆が投下された。逆に言えば、原爆が投下されたことがポツダム宣言受諾の最大の原因になった。原爆投下の責任を問う声があるが、それ以前に、日本政府が速やかにポツダム宣言受諾を決定しなかった責任が問われなければならない。
敗戦によって日本が改変された。敗戦によって民主主義が日本に埋め込まれた。敗戦によって出現した日本民主主義の集大成が日本国憲法。平和主義、基本的人権の尊重、国民主権が日本国憲法の三大基本原理だ。
この国民主権についていま、日本国民は改めて見つめ直す必要がある。高市内閣が暴走している。最大の問題は国論を二分する問題について、主権者である国民の意思が尊重されていないこと。高市首相は国会の議席配分だけを捉えて「民意」だとするが、国会の議席配分が民意を正確に反映していない点に重大な問題がある。
現在の選挙制度は、民意を正確に反映する国会での議席配分を実現するものになっていない。議席配分だけをもって「民意」と断定している点に大きな問題がある。正確に言えば、国会における議席配分は主権者国民の意思=民意と大きくかけ離れている。その是正が必要不可欠である。
主権者である国民の意思を反映する決定を行わなければならない喫緊の二大テーマがある。第一は皇位継承問題。第二は消費税減税問題。いずれも最重要のテーマ。皇位継承では「天皇家の長子による継承」に制度を改めるべきである。敗戦後の制度確定において「明治の残骸」が混入した。これが敗戦後日本のあり方と矛盾している。皇室典範の改正が求められる。
消費税減税は主権者である国民の多数が肯定する経済政策である。これを阻止しようとしているのが財務省。しかし、最終権限を有するのは主権者である国民であって財務省でない。この点を明らかにする必要がある。
高市内閣は拙速に皇室典範改正を強行した。「民意=主権者国民の意思」とかけ離れた皇室典範改正が強行された。ひとつだけ、良かったと言えることは、皇室典範を簡単に変えられるという実績が残されたこと。民意を反映しない皇室典範改正であるから、今後、高市内閣が消滅した時点で、躊躇なく皇室典範再改正を実施するべきだ。
「皇室典範は簡単に変えられる」という事実が確認された意味は大きい。日本の天皇家に「万世一系の男系男子」による皇位継承という事実は存在しない。一部に存在を主張する者が存在するが根拠が薄弱である。
敗戦後の皇室典範に「男系男子による皇位継承」の規定が置かれたが、これが誤りだった。「長子による継承」の定めに変更するべきだ。敗戦後に皇室典範を定めた際、皇位継承を男性のみに限定する規定に対して議会で反対意見が表明された。しかし、十分な審議が行われずに「男系男子による継承」の規定が置かれてしまった。明治の「家父長制的思考」、「男尊女卑思想」の残骸が敗戦後の皇室典範に遺された。この過去の遺物を取り除くことが必要。
敗戦後の天皇制を支える唯一の根拠は「国民の総意」である。「国民の総意」がなければ天皇制そのものが存立し得ない。その「国民の総意」は「女性天皇・女系天皇の容認」であり、「長子による皇位継承」である。
高市内閣は「国民の総意」に基づかぬ皇室典範改正を強行した。そのことが内閣支持率暴落の主因になっている。「国民の総意」を確認して皇室典範を再改正することが必要だ。「長子による皇位継承」が「国民の総意」に基づく着地点になることは間違いないだろう。
消費税の減税について反対論がかまびすしい。その背景は財務省の情報操作である。1990年度と2020年度の税収がほぼ同額であることを示してきた。90年度は消費税率3%、20年度は10%。しかし、ほぼ同額の税収を確保した。消費税のウエイトを低くするか、消費税のウエイトを高くするか。どちらの税構造が望ましいのかという問題である。
「社会保障支出が拡大するから消費税減税はできない」という主張は「宗教の教義」でしかない。「ザイム真理教」という新興宗教の教義である。消費税が大で所得税と法人税が小であるべきか。所得税と法人税が大で消費税が小であるべきか。という問題に過ぎない。
所得税と法人税は「応能課税」。消費税は全国民に同率の税率が適用される「逆進性の強い税」である。格差が際限なく拡大する現代社会において、望ましい税制は「応能負担」を根幹に置くべきものだ。したがって、消費税のウエイトを小にして、所得税・法人税のウエイトを大にするのが適正だ。
この点を明確に説明して主権者国民の意思を問うならば、「消費税減税が圧倒的支持を得る」ことは間違いない。消費税減税を断行して、大企業と富裕層への課税を適正化=強化するべきだ。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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