2024年11月22日( 金 )

加計学園問題という「日本の美しき縁故主義」(2)

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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦

 最近、報道されるようになった文科省から流出したとみられる「総理のご意向」文書は、この年の9月から10月にかけて作成されている。競合する京都と今治のプランの内、今治を優先するべきだという含みを持つ「総理のご意向」なるものが、水面下で内閣府から文科省に伝えられた。これが事実ならば、公正であるべき国家戦略特区の審議が政治によって歪められたことになる。しかも、その受益者が総理大臣の長年の友人であったということだ。

 しかも、加計学園には安倍首相の人間も多数関わっている。「サンデー毎日」(2017年6月16日号)がまとめているが、加計学園グループの千葉科学大学には、以前、客員教授として安倍首相の側近である井上義行・元首相秘書官、萩生田光一・現官房副長官が在籍しており、元文部官僚で、2016年9月まで元内閣官房参与だった木曽功氏が2016年4月から学長となっている。また、2013年から3年間、加計学園監事をしていた弁護士の木沢克之という人がいるが、この人はなんと第二次安倍政権の2016年7月に最高裁判事の一人に任命されている。そして、安倍首相の妻である昭恵夫人は、加計グループの幼稚園の名誉園長になっているほか、加計理事長は昭恵夫人に同行して何度もアメリカの学校を訪問している。そのように安倍と加計は深い関係なのだ。
 
 普通、利害関係者との関わりを疑われないようにするために、許認可権をもつ側は相当に慎重になるべきである。しかも、加計氏と安倍首相は昭恵夫人を交えての家族ぐるみの付き合いである。「国家戦略特区」の諮問会議議長である総理大臣の関係者は選ばれてはならない。仮に選ばれるにしても、正々堂々と企画のコンペを行った上で決めるのが当然だ。

 最近、アメリカでトランプ大統領のロシアとの癒着を調べる動きが本格化しているが、この際、駐米ロシア大使と現在の司法長官がたまたま面談していたことがわかり、その事実だけで、司法長官は調査に関わることを忌避するように求められた。国家戦略特区というのは、政治主導で総理大臣のリーダーシップで推進するものだから、利益相反の疑いが生じないように念にも念を入れなければならい。李下に冠を正さず、である。

 加計学園は、安倍政権が2012年暮れの選挙で復活する前にも、獣医学部設置を目指して働きかけていた。当然、地元の当時は与党だった民主党の国会議員にも働きかけただろう。地元の政治家は陳情を受けてその実現の可能性を政府に問いただすことは当然あり得る。しかし、そのことと、決定権者である総理大臣が「エコヒイキ」をして友人を優遇することは全く別である。

 安倍首相を応援する立場の「産經新聞」などは、民主党の議員が獣医学部の新設をかつて働きかけていた一方で、現在は国会で安倍首相を追及していることをさもダブルスタンダードで問題であるかのように記事にしていたが、全く的はずれである。

 民主党では加計学園が所在する岡山県の有力な参議院議員が、学園創業者との長年の友人関係があった。そういうこともあって民主党政権時代には構造改革特区を使った加計学園の獣医学部はあえて認められなかったのではないか。そうであるならば、民主党政権は癒着の疑いを避けた、という意味では、むしろ公明正大だったということになる。

(つづく)

<プロフィール>
nakata中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
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