呉・大和ミュージアム視察レポート(後)
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大和が沈む海底の最新調査結果も
戦艦大和は、45年4月に鹿児島県坊の岬沖でアメリカ軍の攻撃を受け、沈没した。海底に沈む戦艦大和の現在の姿を探る潜水調査はこれまで4度行われ、呉市は第4回目となる調査を2016年5月に行っている。現在大和ミュージアムでは、この調査の結果を企画展として展示している(11月27日まで)。無人探査機に搭載した高性能カメラに映し出された海底の大和は、高さ600メートルにもおよぶ煙を噴き上げた大爆発によって無残に2つに分断され、バラバラになって沈んでいる。
大和は、建造中は極秘扱いだったために詳細が不明な部分も多く、潜水調査は大和の実際の姿を知るためにも大きな意義のある試みだ。※クリックで拡大
現在の呉の姿を海上から眺める
大和ミュージアムの展示を堪能したあとは、隣接する呉中央桟橋に向かいたい。ここからは江田島や広島市行きの船便が出ているが、お目当ては「艦船めぐり」の遊覧船ツアーだ。所要時間は30分、料金は大人1,300円。元海上自衛隊員の解説を聞きながら、かつて大和を建造した旧海軍のドック跡(現在はジャパンマリンユナイテッド呉事業所の一部)や海上自衛隊呉基地の沿岸をめぐる。
ジャパンマリンユナイテッド呉事業所は、超大型のコンテナ船の建造を主力にしている。この日も、日本郵船の巨大コンテナ船「NYK FALCON」と「NYK SWAN」が船体の艤装作業を続けていた。海上自衛隊呉基地には、基地に所属する護衛艦が停泊している。やはり目を引くのは、最新鋭のヘリコプター護衛艦「かが」だ。全通型の甲板を持ち、ヘリコプター5機が同時に発着できるという。
現在呉で建造されている船は民間用のみ。大和を生み出したドックも、今は埋め立てられて地上での作業場や資材置き場として活用されている。現在の呉からは、かつての「海軍工廠」の趣を見ることはできない。
箱モノの常識を超え、更新される強さ
最後に、観光拠点としての大和ミュージアムを改めて考えてみよう。
地方自治体が建てた博物館の多くは、いわゆる箱モノとして建造以降大きな改善やアップデートがなされることは少なく、入場者数も初年度以降は伸び悩むことも多い。大和ミュージアムも初年度に最大の入場者数を集めたことは確かだが、その後もこの潜水調査のように意欲的な取り組みを行い、一度減った入場者数をさらに増やすことに成功している。
平和記念資料館、宮島、山口県岩国市の錦帯橋など広島市とその近辺には有力な観光地が多い。広島県は県内の観光地ごとの入場者数を公開しているが、「新参」の大和ミュージアムは平和記念資料館に次いで2位となっており、博物館としての意義はもちろんだが、集客を狙う観光施設としてもたいへん優れていることがわかる。大和ミュージアムは、呉という街が経てきた「海軍」と「造船」、そしてそれを貫く「技術」という屋台骨を改めて再検証しながら、多くの人を呼び込むエンジンとなっている。これは、地方創生のあり得べき1つの姿ということができるだろう。
(了)
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