ZOZOTOWN運営のスタートトゥデイ、時価総額１兆円突破～最大のライバルはアマゾン・ジャパン（後）

保有株の資産価値は4,243億円也

　創業者で、社長の前澤友作氏（41）は、ケタ違いの億万長者として有名だ。千葉県出身。プロのミュージシャンを目指していた。活動資金を得るために輸入レコード・CDのカタログ通販をはじめたが、これが大当たり。98年5月に有限会社スタートトゥデイを設立（2000年4月に株式改組）、本格的に事業をスタートする。07年10月、東証マザーズに上場を果たした（12年2月に東証1部に市場変更）。試着が必要なアパレルは通販になじまないという常識を覆し、ZOZOTOWNを日本最大級のファッション通販サイトとして急成長させた。

　前澤氏は15年、タレントの紗栄子さんの新恋人として芸能誌の話題に上った。紗栄子さんはプロ野球のダルビッシュ有投手とデキ婚後、わずか3年で離婚。今夏、両者の破局が報じられた。当時「資産2000億円の大富豪」と言われたが、資産ははるかに膨らんだ。

　前澤氏はスタートトゥデイの筆頭株主で、発行済み株式の37.67%、1億2,141万株を保有している。8月1日の上場来最高値の3,495円で計算すると、時価総額は4,243億円。

　受け取る配当金もケタ違い。東洋経済オンライン（7月31日付）の「配当金で稼ぐ経営者」ランキングによると、前澤氏の配当金は35億2,111万円。ソフトバンクグループ（株）孫正義会長兼社長の101億7,300万円、（株）ファーストリテイリング（ユニクロ）の柳井正会長兼社長の80億4,554万円に次いで3位だ。

　世界の大富豪の仲間入りした前澤氏の金満家ぶりをメディアが取り上げた。17年5月、米国人画家ジャン＝ミシェル・バスキアのどくろを描いた絵画を123億円で落札。米国作家の作品としては競売史上最高額だったこともあり、海外メディアが大きく報じた。16年5月には同じバスキアの絵画を62億円で落札している。地元、千葉県に100億円を投じて美術館を備えた新居を建築中と報じられている。

独り勝ちのアマゾンに対抗できるか

　スタートトゥデイの快進撃はいつまで続くか。その前に立ち塞がるのが、ネット通販の巨人、米アマゾン・ドット・コムである。米国では、アマゾンに敗れた小売り実店舗の閉鎖が記録的なペースで進んでいる。米通信社ブルームバーグは、「米国で小売店舗閉鎖が加速、アマゾン独り勝ちの影響深刻に」（17年4月8日付）と報じた。

　〈クレディ・スイス・グループのアナリスト、クリスチャン・バス氏によると、2017年の閉鎖店舗数は約2,880店と、リセッション（景気後退）最中の08年の同期をすでに上回ったほか、16年同期の1,153店を大きく超えた。このペースで続けば、17年全体では8,640店（08年には約6200店）が閉鎖に追い込まれる可能性もある〉と伝えた。

　アマゾンに蹴散らされたのは実店舗だけでない。同業のネット通販会社も同様だ。

　〈積極的なネット販売戦略を展開しているブランドでも、業界リーダーであるアマゾン・ドット・コムの高い成長についていくのに苦心している。調査会社イーマーケターによると、昨年の電子商取引売上高の内訳は53%がアマゾン・ドット・コム、それ以外の小売業者が47%だった。〉（同）

　米国で起きていることは、数年遅れで日本でも起きる。実店舗では百貨店の閉鎖が相次いだ。ネット通販の先駆者だった楽天（株）は、アマゾンに押されて大苦戦だ。どの通販会社も手を出さなかったファッショ衣料の通販に特化して勝ち組となったスタートトゥデイ。米国で最大規模の衣料販売会社に成長した米アマゾン・ドット・コムの日本法人、アマゾン・ジャパン合同会社とどう渡り合うのか。数年後に勝負はつく。

（了）
【森村　和男】
※本記事は8月10日にNETIB-NEWSで掲載したものです。