2024年11月27日( 水 )

中国経済新聞に学ぶ~中国企業が本間ゴルフを買収、香港で上場

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 2016年11月17日、トランプがアメリカ大統領に当選したことを知った安倍首相は、ニューヨークのトランプタワーへ赴きトランプと対面し、特注の「本間(HONMA)ゴルフクラブ」を贈った。本間ゴルフは世界で最も有名なゴルフ用品ブランドの一つであり、60年近い歴史を持つ老舗だ。本間が日本のブランドであることは日本社会では周知の事実だが、しかし中国人は「本間」は日本企業ではなく中国企業であるという。なぜ日本か中国かの論争が起きるのか?それは、本間ゴルフは2010年に水面下で中国企業に買い取られ、中国資本が株を保有する会社になっていたためだ。

 日本で1959年に設立された本間ゴルフは、長い歴史を持つ世界トップクラスのゴルフ専門ブランドの一つだ。本間の作るゴルフクラブは長年にわたって贅沢品の代名詞であり、多くの国際的な有名ブランドと並び称された。世界で最も高価なゴルフクラブは本間によるものだ。

 しかしほどなくして、日本の不動産価格は上昇の一途を辿り始める。本間は主業務に集中せず、値上がりを続ける不動産業やゴルフ場に多額の資金を投入した。同時に、この老舗企業の市場戦略にも乖離が現れはじめた。パーシモン製クラブから、伝統的な木製クラブに代わって主流になりつつある金属製クラブへの転換を渋ったのだ。

 まもなく日本の不動産バブルが崩壊すると、本間も財政難に陥った。負債が大幅に増加し、販売額および市場シェアも下降、2005年にはジャスダックの上場廃止となり、破産することとなった。

 2009年9月、中国温州出身で、POVOS(奔騰電器)社のCEOである劉建国が日本で開催された日中著名企業家の交流会に参加した際、ゴルフ界の有名ブランド・HONMAについて言及した者がいた。

 当時、劉建国に寄せられた情報によれば、本間ゴルフは経営ミスにより負債が累積し、最終的に経営破綻してファンドに経営権が売却されたが、ファンド会社は株式の処分を予定しており、それを引き受ける会社を探しているという。

 ここまで聞いて、劉建国は心を決めた。実は、当時交流会に参加していた多数の中国の企業家は、いずれもこのプロジェクトに興味を示していた。ただし、本当に興味を持ったのはゴルフ好きの劉建国のみで、入札のため二度目に日本へ向かった中国の企業家は劉建国一人だけであった。最終的に劉建国は落札に成功した。

 長年のビジネス経験を持つ劉建国は、HONMAブランドを百年続く老舗にすることを目標に、彼をあまり信頼していなかった日本人を説き伏せた。2010年6月、劉建国は1億ドルを出資して本間の51%の株式を購入し、この日本企業の経営者となった。一年後、劉建国は4.2億ドルの価格で彼が設立した奔騰電器をフィリップスに売却し、更に1億ドルを出資して本間ゴルフの100%の株式を取得し、本間ゴルフの経営に集中することになった。

 本間ゴルフの買収後、劉建国は有名な3R戦略-伝統、品質及び人材の保持、企業文化とブランドの再興、活力があり国際化された市場トップのゴルフブランドの再構築-を提示した。

 例えば、業務を元の管理者に任せ、新しい担当者を据えない/社員による持ち株を推奨する/営業拡大のための投資を増やす/イメージキャラクターを務める選手を探す、などを行った。同時に会社本部を日本の新しい企業が集う東京・六本木に移し、社員152人が会社の3.8%の株式を保有し、残りの88.7%を劉建国が保有した。これにより中国の企業経営者と日本人社員は運命共同体を構成することになった。

 2016年5月、上海最大の不動産デベロッパー兼投資会社の復星国際グループ(総裁:郭広昌)が6000万ドルの資本を本間ゴルフに投資し、7.5%の株式を保有することになった。

 現在、本間ゴルフは86店舗の直営店を持ち、フランチャイザーは2105店に達し、2014年に比べて83%の成長を遂げた。年間収益は240億円近くに上り、そのうちゴルフクラブの収入が208億円を占める。

21 買収から6年目にあたる2016年10月、本間ゴルフは香港で上場し、香港市場で唯一のゴルフ産業株式となり、市場の熱烈な評価を受けて株価は上場当日に上限となる10香港ドル近くまで上昇した。時価総額は60億香港ドルに達した。88%以上の株式を保有する劉建国は、5年の期間をかけて「奔騰電器」2社分の金を稼いでしまった。そして本間ゴルフの株式を持つ社員たちもこれによって多額の利益を得ることができた。

 上場後、劉建国社長は更に国際市場を開拓するという新しい目標を掲げた。現在、本間ゴルフの販売額トップ3を占める日本、中国、韓国はいずれも世界五大ゴルフ製品市場に教えられている。

 しかし、本間ゴルフの中国市場での発展は予想通りとはいかない。調査研究機関の予測では、中国のゴルフ市場の成長率は8.3%であり、市場全体の成長率より5ポイント高い。しかし、近年、中国政府が詳細なゴルフ禁止令を発し、党・国家公務員による規定違反のゴルフを禁じている。中国におけるゴルフの「気まずい」立場は本間ゴルフも認めているが、もし人々のゴルフに対する見方が官僚の腐敗案件によるマイナスの影響を受けているとすれば、中国におけるゴルフ製品の需要も影響を受ける可能性がある。

 本間ゴルフの戦略から考えると、今後の発展は北米・欧州での市場シェアに重点を置いている。悲喜こもごもの見通しを前に、本間ゴルフは成長を続けられるのか、注意深く観察する必要があるだろう。


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