引退する伊達公子選手 真のアスリートに惜しみない拍手を
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女子プロテニスプレイヤーの伊達公子は28日、自身のブログでプロ選手としての引退を表明した。9月11日からの日本女子オープンが最後の公式戦となる。
伊達公子は1970年生まれの46歳。高校卒業と同時にプロテニスプレイヤーとしての活動を開始し、日本人として初めての世界ランキングトップ10入りを果たす(最高4位)。96年には当時世界1位、最強の王者と言われたシュテフィ・グラフを破るなど日本女子テニス史上最高峰の選手として活躍。しかし同年、マルチナ・ヒンギスに敗れ引退を表明した。
その後2008年に復帰を表明し、さまざまな「史上最年長」記録を打ち立ててきたのは周知の通り。そして今回の引退表明だ。膝、肩に負傷を抱え、思い通りのトレーニングとプレーができなくなったというのである。残念だが、まずはゆっくり身体を治してほしい。
以下は個人的な余談である。
筆者はかつて、引退期間中の伊達選手にインタビューしたことがある。彼女が当時取り組んでいたテニススクールのこと、かつての名勝負のこと、さまざまな質問を投げかけたが、伊達選手からは熱のある返事は返ってこない。
「まあ、スター選手だからって、テニスの話をするのが好きなわけじゃないだろうし」そう思った筆者は、何の気なしにふと質問した。「最近、テニスしてますか?」。
愚問だった。
伊達選手の目の色が変わったのだ。その目は「私はテニスプレイヤーなんだから、テニスをするのは当たり前だろう」と告げていた。コートの向かい側の相手選手に向ける、あの厳しい視線だった。
彼女は体調を整えるためではなく、アスリートとして向上するためのトレーニングを続けていた。もちろん毎日のようにコートに立っているという。ハードな筋力トレーニングも欠かさない。
「それじゃ、現役時代より強くなってるんじゃないですか」
気圧された筆者がついこぼした軽口には返事はなかったが、その目からは「もちろん」といわんばかりの強い自信がのぞいていた。伊達選手の現役復帰のニュースが流れたのはそれから数年後だったが、筆者はまったく驚かなかった。その後の快進撃も、当然としか思わなかった。
そんな生まれながらのアスリート、伊達公子選手がついにラケットを置く選択をした。残念だという気持ちもあるが、やはりひとつ質問してみたいことがある。「もう十分、テニスされましたか?」。
また、あの厳しい視線を投げかけられるのだろうか。
【深水 央】
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