減額請求で契約解除はおろか売却もできないオーナーの事情~借主偏重の借地借家法
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学生寮の賃料を争って福岡地裁で裁判が行われている。この学生寮は、地下鉄室見駅から徒歩5分に立地し、新築当初は学生寮の運営会社が所有していたが、2006年9月に売却して以降は同社が賃借する形で学生寮を運営してきた。
昨年12月に所有者が変更されてからも、当初の賃貸借契約が継続されてきたが、今年3月に「新築から23年を経過していることや周辺相場から賃料は不相当に高額である」とし、従前賃料の3分の1を超える115万円の減額を求めた内容証明が所有者である貸主に送られていた。これに対し貸主は、「請求には応じられない」とし、「本物件の売却価格の推移等を加味して」賃料増額請求し、調停を経て本裁判となった。賃料の妥当性は、裁判所が判断する。所有者としては、訴訟の手間や裁判費用などのコストがかかるほか、賃料に争いがある間は事実上売却ができないなど隠れたコストも発生する。減額に応じられない場合も賃貸借契約の解除は難しいため、新たな借主を見つけることも困難だ。
借地借家法では、特約で賃料増額請求を排除すること可能だが、減額請求の排除は無効であるほか、普通借家契約は更新が原則であり貸主が更新しない旨の通知をするためには正当な事由が必要であるなど貸主による契約解除は難しく、過剰な借主保護が問題視されてきた。近年は、更新の概念がない(再契約は可能)定期借家契約も注目を集めているが、貸主による契約解除は普通借家と同じく簡単ではない。このように借主偏重な借地借家法には、不動産会社などから改正を求める声も多い。
【永上 隼人】
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