免疫力を測定して、がんの予防に(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
日本人男性の3人中1人は、がんで亡くなるとされている。がんは1981年から日本人の死亡原因の1位になって、その後ずっと不動の1位をキープしている。しかし、がんによる死亡率は今後減るどころか増加が予想されている。その理由は、人類は今まで経験したことのない高齢化社会を迎えることになるが、がんの発生率は老化とともに高くなっていくからだ。
がんは本当に厄介な病気で、種類も多く、対応も一筋縄で行かない病気である。医療の進歩によってがんの根治は間近であるといわれながらも、がんで苦しんでいる人が減らないのも周知のとおりである。がんは患者にとって大きな苦痛をもたらすし、政府にとっては医療費高騰を招く悩みの種である。そのような状況のなかで、がんの新しい治療法として登場しつつある免疫治療法に注目が集まっている。
がんを手術やクスリなどで治すのではなく、人体に本来備わっている免疫のメカニズムをうまく活用することで、がんを治そうとするのが免疫治療である。人間の体はよくできていて、外部から敵が侵入した場合、それを排除してくれる免疫システムという素晴らしい機能が用意されている。免疫を担当する免疫細胞の働きについては、数十年前まではあまり解明されていなかったが、21世紀に入って、免疫細胞の働きやメカニズムが解明されつつある。免疫のシステムは本当に複雑で、今もなお研究が進められているのが実情である。しかし、今までの研究成果の一部を活用した治療薬の開発も行なわれている。
がんとは、DNAが損傷した結果、細胞に異常が発生し、細胞増殖が止まらない異常細胞のことである。免疫の力を利用して異常細胞をたたき、がんを治療しようとする試みは大きな期待が寄せられている。日本でも外科的治療(手術)、放射線治療、抗がん剤治療に次ぐ第4の標準治療として、免疫治療が実施されている。しかし、免疫治療はまだ臨床データも少なく、ほかの標準治療と同等にはなっていないのが現状である。ところが、免疫のメカニズムをうまく活用した「免疫チェックポイント阻害剤」がアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を得たことで、再び免疫治療に期待が高まっている。しかし、チェックポイント阻害剤は優れた効果が認められたものの、薬価が非常に高いことが問題になっている。
今でも医療費は年間40兆円ほどになり、日本政府の大きな財政負担になっている。このような高価なクスリの登場は近い将来日本の財政破綻を起こすに違いないと警告を鳴らす専門家もいる。今までの医療は病気が発生してから治療をするものだと考えられていた。しかし、これからは予防が大事であると考えられるようになっている。病気が発生しないように、普段から健康に気を使おうということである。バランスのよい食事を心がけたり、飲酒の量や回数を減らしたり、適当な運動をしたり、自分で病気にならないように注意する。予防とは日々の心がけである。
(つづく)
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