2024年11月06日( 水 )

北九州市議会に最年少議長誕生 ものづくりの潜在能力を生かすまちづくり(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

北九州市議会議長 井上 秀作 氏

 今年2月、北九州市議会議長に47歳の井上秀作氏が就任した。井上氏は東京でサラリーマンを経験し、元北九州市議会議長の父・勝二氏の秘書に就任。以後、市議会議員となって活躍してきた。井上氏は、積極的に北九州市の発展に寄与したいと語る。北九州市のものづくりのポテンシャルを生かした地方創生プランとは何か。井上氏に北九州市発展のための取り組みを聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

東京から移住者を呼び込め!

 ――風力発電も介護ロボットも、新しい技術を導入して発展させていくというのではなく、すでに北九州にある技術力を国内外にどう発信していくかという点で共通していますね。

 井上 北九州はものづくりの町ですから、蓄積された技術力、技術量は相当なものがあります。そのポテンシャルを生かして次世代につないでいく必要があります。ただ、現実的な問題として、北九州市は人口減少に歯止めがかかっていない状況があります。先ほどの2つの矢についても、人口増加につなげるという目的もあります。

 また、産業を発展させて人口を増やすという長期的な施策のほかに、直接的な人口増加を目的とするアイデアも提唱させていただいております。それが3本目の矢になるのですが、東京都から北九州市への移住、定住の促進です。北九州市は昨年、50歳から住みたい都市の第1位(『田舎暮らしの本』宝島社)に選ばれました。別の女性週刊誌でも、生活天国ナンバーワンに北九州市が選ばれています。北九州市の持つ都市機能は全国的な視点で見ても評価が高いことがわかります。

 ――東京都からの移住希望者も年々増加していますね。

北九州市議会議長 井上 秀作 氏

 井上 おっしゃる通りですが、移住を希望してもなかなか希望通りの都市がない、そのため東京に住み続ける、というケースも多くあると聞きます。東京は人口のボリュームが圧倒的ですから、それに付随するサービスも充実しています。一番近いコンビニまで車で30分かかる、スーパーまで40分かかる、といった地域では暮らすことができないのです。交通インフラが整っていること、スーパーやコンビニが徒歩圏内にあること、デパートくらいはあること。最低限、これくらいは求めています。そして、北九州市はそれらの要望を満足させることができる、ということです。病院の数(全国の政令指定都市で2位)も介護施設の数も充実しています。さまざまなデータで北九州市は他都市に比べて優位性が示されています。

 ――シニア世代のセカンドライフにうってつけですね。

 井上 シニア世代はもちろん、子育て世代にもそう感じていただきたいと願っています。北九州市は保育園の待機児童がゼロなのです。大都市で抽選を繰り返してがっかりしていらっしゃる方から見たら、うらやましがられると思います。こういった北九州市の良いところをもっと情報発信していかなくてはなりません。

 実は昨年、小さな一歩ではあるのですが、東京にある北九州市の事務所を永田町から有楽町へと移転しました。永田町には公務員の方はたくさんいらっしゃいますが、一般企業にお勤めの方向きの場所ではありません。有楽町ならばさまざまな方が気軽に来ていただけると思い、移転することになったのです。そこでビラを配ったり、移住セミナーを開いたりすることで、少しでも多くの方に北九州市の魅力を知ってもらいたいと考えています。私も東京で講演することがあるのですが、そのときに「皆さんが夕方の6時に自宅で脳梗塞で倒れたなら、おそらく助かりません。けれども北九州市なら助かる可能性が高まります」とお話しします。東京では救急車がいくらサイレンを鳴らしても交通渋滞でどうしようもなく、病院までなかなか到着できません。到着しても病院が不足しているために受け入れができないと、たらいまわしにされるケースもあります。脳梗塞は発症からの処置開始時間で生存率が大きく変わりますから、大問題なのです。北九州市は全国で2番目に早いスピードで患者さんを病院に運ぶことができます。病院もベッド数も十分にあります。ですから、北九州ならば命を守ることができますよ、と。とくに高齢の方は普段から危機意識を持っていますから、熱心に耳を傾けてくださいますね。

 ――具体的なイメージを伝えることで理解が深まるのでしょう。若い方へのアプローチはどのようになさっているのですか。

 井上 たとえば、相続で1億円のマンションを引き継いだとします。このマンション維持費や修繕費などを支払って、駐車場代を払って、なおかつ生活費の高い東京で暮らしていたら、実際のお財布の中身は私たちと大差ないかもしれませんよ、という話をしますね。そして、その1億円のマンション、北九州市ならば同じクオリティのものを3,000万円で購入できますよ、と続けます。賃貸住宅も同じです。神奈川県の藤沢で12万円の家賃を払っていたのが、北九州市なら都心部の同程度の部屋でも6万円で住めたというケースもあります。生活にかかるコストも東京の6~7割といったところだと思います。安心して暮らせる北九州、低いコストで満足いく生活を送ることができる北九州の魅力を、これからどんどん発信して、移住を促進していくことが重要です。こういった地道な活動もあって、北九州市は人口の減少率で全国一ですが、その減少の勢いが低下してきています。出生数も増えてきています。今後は人口増に転じさせなくてはなりません。

(つづく)
【文・構成:柳 茂嘉】

<プロフィール>
井上 秀作(いのうえ・しゅうさく)
1969年4月、北九州市小倉北区生まれ。駒沢大学法学部政治学科を卒業後、国際航業(株)に入社。95年、井上勝二北九州市議会議長秘書に就任。2002年2月、北九州市議初当選、以後5期連続当選を果たし、17年2月に北九州市議会議長に就任。趣味は音楽・映画鑑賞、釣りなど。

 
(3)
(4)

関連キーワード

関連記事