北九州市議会に最年少議長誕生 ものづくりの潜在能力を生かすまちづくり(5)
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北九州市議会議長 井上 秀作 氏
今年2月、北九州市議会議長に47歳の井上秀作氏が就任した。井上氏は東京でサラリーマンを経験し、元北九州市議会議長の父・勝二氏の秘書に就任。以後、市議会議員となって活躍してきた。井上氏は、積極的に北九州市の発展に寄与したいと語る。北九州市のものづくりのポテンシャルを生かした地方創生プランとは何か。井上氏に北九州市発展のための取り組みを聞いた。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)
BCP(事業継続計画)施設の最適地
井上 実は以前、北九州市立大学の学生を対象にアンケートをとったことがあるのです。「卒業後、北九州市に住みたいか」という質問に対して、5割の学生が住みたいと答えていました。ところが卒業後、実際に継続して北九州市に住み続ける方は2割程度です。残り3割は、「住み続けたかったが、働く場所がなかった」ために福岡市や他の都市に引っ越してしまっているのです。この現実がはっきりとわかりました。そこで私たちが4本目の矢として力を入れているのが、企業BCP施設の誘致です。
BCPとはBusiness Continuity Planの略で「事業継続計画」と訳されます。要は万が一のときのバックアップですね。この施設を北九州市に持ってきてはどうか、と企業の方々にアピールしています。
――万が一とはどのような事態でしょうか。
井上 地震などの自然災害、大事故などを想定しています。北九州市は有史以来、直下型の地震が起こっていないのです。他都市と比べて、これだけ安定しているのは北九州市だけだと思います。
日本の場合、本社は東京や大阪、名古屋といった大都市に集中しています。平時は取引先との関係などもあってメリットを享受できると思います。しかし、大地震が発生して本社機能がマヒした場合、大変困った状況に陥ってしまうでしょう。世界を相手に戦っている企業の本社機能が止まってしまう可能性があるのは、致命的なリスクだと思います。その万が一の際、スイッチを入れ替えたら瞬時に本社機能を移すことのできる施設、BCP施設です。その施設を北九州に設けませんか、という働きかけを行っています。すでに大手通信企業のBCP施設が北九州にありますが、これからも増やしていきたいですね。
――北九州市は地震のリスクが低い、ということはわかりますが、企業にとって他にメリットはあるのでしょうか。
井上 BCP施設を設置するための最低条件は自然災害のリスクが低いことですが、それだけでは不十分です。まず、世界のどこにでも行ける交通網がなくてはなりません。北九州市には北九州空港があり、現在東京便が1日16便往復しています。大阪までならば新幹線で2時間です。また、市内の交通インフラも充実しています。神戸以西で都市高速道路があるのは、福岡市と北九州市の2市だけ(編集部注:広島にも都市高速道路はあり、神戸以西では3市)なのですよ。たとえば、広い土地が必要なデータセンターなどを八幡につくり、本社機能を小倉に設置したとしても、10~20分で行き来が可能です。私たち北九州市は、企業の方が望むインフラを持っています。こんなに適した場所は国内には少ないと考えています。
――BCP施設が増えれば、学生も北九州市を離れずに済みますね。
井上 BCP施設にはうってつけの都市です。このようなPR活動は従来、市役所職員がやっていたのですが、私はそのやり方には反対しています。市長や市議会議員が自ら企業を訪問してアピールした方が効果的だと考えているからです。市長や議員は選挙に当選するくらいなのですから、「しゃべり」は上手なはずです(笑)。その能力を最大限に生かして、東京の大企業の本社に議員自身が乗り込みなさい、企業誘致は職員ではなくて議員が行った方が、より効果が上がるはずです、と全員に言っています。市議会には57人も議員がいるのですから、それぞれが企業訪問したら相当な企業数をカバーできるはずです。だから、ガンガン行きましょう!と旗を振っています。実際、私は今、月に10社訪問することを自分にノルマとして課しています。年間120社です。そして、どこの企業が来てくれたか、どういう反応だったかをチェックしています。成功した事例としては若松区のタイヤメーカー工場誘致があります。すでに第3工場までできています。私自身が積極的に取り組み、営業をかけて工場をつくってもらうことができました。こういったケースが増えれば、若者の働く場所を確保することができるようになりますし、北九州市に活気が生まれると思います。
ものづくりの町として発展させたい
――議員自らが市をPRしていく考え方は大切ですね。さて、近年は海外からの旅行者が増加しています。北九州市の観光について、お考えをうかがいます。
井上 外国人観光客の増加には期待をしています。響灘にクルーズ船が着岸できる岸壁を整備した結果、クルーズ船が寄港してくれるようになりました。数千人単位の外国人旅行客が立ち寄ってくださるのですから、ぜひ北九州の良いところを見て、また来たいと思っていただけるようにしたいですね。北九州市には門司港レトロ、関門海峡、小倉城、ポップカルチャーの集積地・あるあるCityなど、見どころがたくさんあります。ただ、その見せ方やホテル数など、改善していくべきところはあるかもしれません。
――IR(カジノを含む統合型リゾート)誘致についてはいかがでしょうか。
井上 IRは第1弾が3カ所で決まりそうですが、第2弾では北九州市も手を挙げたいと考えています。
――最後に、井上議長が考える北九州市の目指すべき姿についてうかがいます。
井上 北九州市は産業都市ですから、他都市とは違った特徴を生かした働きかけが可能だと思います。小倉南区には自動車関係の工場が多数並んでいますし、戸畑、小倉、八幡地区には製鉄関係で技術を蓄積してきた企業が今も多数あります。福岡市は商業の町ですから、北九州市とは趣がまったく異なりますね。ですから、北九州市が福岡市と競争したり、真似したりする必要はまったくないと思います。北九州市は独自の、都市の特徴を生かした地方創世を目指すべきだと思います。また、これからは近隣都市との連携も強めていかなくてはならないと考えています。連携中枢都市圏という広域連携がありますが、北九州市は北九州都市圏の5市11町の中枢都市です。市から地域に視点を広げて、互いに発展できるよう協力関係を強めていきます。また、市長と議会が協力して市の発展に寄与することができたら幸甚です。市の方向性などについても、議員自らがどんどん提案していくような、活発な市議会にしていけたらと思います。
――本日はご多忙のなか、まことにありがとうございました。
(了)
【文・構成:柳 茂嘉】<プロフィール>
井上 秀作(いのうえ・しゅうさく)
1969年4月、北九州市小倉北区生まれ。駒沢大学法学部政治学科を卒業後、国際航業(株)に入社。95年、井上勝二北九州市議会議長秘書に就任。2002年2月、北九州市議初当選、以後5期連続当選を果たし、17年2月に北九州市議会議長に就任。趣味は音楽・映画鑑賞、釣りなど。関連キーワード
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