プレイボーイ創業者ヒュー・ヘフナーを偲ぶ(1)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
アメリカの大衆文化を変えた男、ヒュー・ヘフナー
アメリカの文化に革命的インパクトを与えたといっても過言ではないヒュー・ヘフナーが亡くなった。アメリカ史上最強のブランドとなった「プレイボーイ」の創業社長は、91歳であの世に旅立った。日本版の月刊「プレイボーイ」誌(2008年休刊。集英社インターナショナルから刊行されていた)を記憶している方も多いだろうが、アメリカでのヘフナーの存在感は出版界にとどまらず、政界やビジネス界にも広くおよんでいた。メディアに新たな息吹を吹き込み、保守的なアメリカ社会に「表現の自由」と「性的文化革命」をもたらした男であった。
今や「ツイッター大統領」と異名をとるドナルド・トランプは、かつて「プレイボーイ」誌の表紙を飾った数少ない男性の1人である。また、プレイメイトと呼ばれるヌードモデルを撮影するビデオに出演したことがあったため、昨年の大統領選挙期間中、トランプ候補はヒラリー・クリントン候補から「女たらしの好色オヤジ」と揶揄されたこともあった。しかし、これは後に一種の「フェイクニュース」であったことが判明。というのも、トランプがビデオに登場するのは間違いないが、何らポルノチックなものではなかったからだ。
プレイボーイ・マンションは当代一流のサロン
いずれにせよ、ヘフナーが「プレイボーイ・マンション」と呼ばれた豪邸で主催するパーティーには各界の著名人が多数顔を揃えたものである。不動産王のトランプも常連客の一人であった。実は、ヘフナーは熱心な民主党支持者であった。多額の献金を提供していたものだ。そして、トランプ本人もかつては民主党支持者であり、安倍首相夫妻が訪ねたフロリダの別荘にも、クリントン夫妻は何度も招かれ宿泊していたほどの仲だった。
ちなみに、トランプは1990年にはプレイボーイ誌のインタビューに登場し、自らの経営理念に加え、将来の政治的野心についても語っている。その中で「大統領になるつもりはないが、万が一、アメリカが国難に陥りそうな場合になった時は考える」と含みのある答えを述べていた。また、そのインタビューでは「自分は誰も信用しない。信用できるのは誰にも負けない軍事力だ」と明言している。安倍首相はトランプ大統領と初めて会う前に、このインタビュー記事を熟読したという。
日本ではヘフナーといえば、「ポルノを一大産業に成長させたやり手経営者」「常々、多数の美女を侍らす遊び人」といったイメージが強いが、本人は酒もたばこも飲まない。敬虔なクリスチャンの両親の元で育った影響であろうか。表の派手なイメージとは裏腹に実際のヘフナーはシャイな性格だった。
筆者はシカゴにそびえるプレイボーイ・タワーでヘフナーと会ったが、真面目を絵に描いたような人物であった。葉巻は手放さなかったが、周囲をけむに巻き、ポーズをつける小道具でしかなかった。日本から当時人気だったピンク・レディーがプロモーションのために訪ねてくると、ご機嫌で一緒にジャグジーバスでの撮影にも応じていたが、口説いたりするようなマネは一切しなかった。英語の苦手な日本の女性歌手を丁寧に扱うジェントルマンぶりを発揮したものだ。(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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