ビジョンなき法人運営の惨状~利権化された名門「筑女」(中)
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学校法人 筑紫女学園
数値化された破局の兆候
訴訟にともない、福岡地裁は、2016年8月31日付で長谷川氏の理事長としての職務執行停止を命令。それ以前の混乱を含めると、意思決定機関が機能不全になる異常事態は、少なくとも1年近く続いた。この間、「筑女」の経営は悪化した。2016年度(17年3月期)では、売上高にあたる教育活動収入は、前期比2.4%減の49億424万円を計上。営業利益にあたる教育活動収支は2億6,075万円の赤字となり、当期純利益にあたる基本金組入前当年度収支差額は、1億5,966万円の赤字となっている。
公的補助金を受け、税の優遇措置も受ける学校法人は、民間企業とは異なり、単純に利益を追求する存在であってはならないが、補助金にあやかり、赤字を垂れ流し続けているようでは、その存在意義が問われる。「筑女」の場合、赤字計上は、生徒数の減少による教育活動の収入減に起因。さらに、収入減に対し、高止まりしている人件費(18年度35億9,282万円)にも課題がある。経常収入に対する人件費の割合(人件費比率)は、全国平均53.7%を上回る71.9%。学生や生徒などからの納付金(18年度37億4,448万円)に対する人件費の割合(人件費依存率)は、全国平均73.9%を上回る95.9%。生徒数を増やすことで収入を回復し、一方で、コスト削減を行っていかなければ、経営悪化の一途をたどる。
少子化のなかでも健闘し、志望者・入学者数を増やしている学校法人もあるなか、「筑女」の苦戦は続いている。入学者数は減少基調にあり、2015年1,413人。前年比53人増となったが、17年度の入学者数は、大学、高校、中学、大学附属幼稚園のすべてで定員割れとなっている。創立以来、初の僧侶以外の理事長であり、かつ「生長の家」で活動してきた長谷川氏の理事長就任は、仏教関係者の間でも話題となり、とくに浄土真宗の寺院の子女が入学する大学など、入学者数にも悪影響をおよぼした感は否めない。
女子教育の名門校「筑女」が、創立から110年の歴史のなか、築き上げた資産は239億円。現預金32億円の蓄えがある一方、借入金の割合は少なく、強固な財務内容を誇っていると言える。資産のなかには、笠氏が理事長時代に2億8,500万円で購入した、かつて「忍者村」と呼ばれていたテーマパーク「福岡歴史の町」(福岡市西区)の跡地約2万坪も含まれている。解体費や施設の建設費も含めた総コストは4億3,970万円。その一方で、これまで所有してきた研修施設「光雲荘」(熊本県阿蘇市)の土地・建物を帳簿価格の4分の1(6,100万円)で売却しようとしていた。つまり、所有資産を破格の安値で手放しつつ、不要不急の廃虚付の土地を購入しようとしていたのである。経営の悪化が進むなか、放漫としか言いようがない。また、国・県から入る毎年約9億5,000万円の補助金がなければ、経営悪化が加速するのは明白だが、今回の一連の騒動による理事会の機能不全で、一時は2月中~下旬に決定する私学助成金への影響が懸念される危機的状況にあった。
(つづく)
【山下 康太】<INFORMATION>
代 表:杣山 眞乘
所在地:福岡県太宰府市石坂2-12-1
設 立:1945年7月
基本金:224億3,677万円
教育活動収支:(17/3)49億424万円関連キーワード
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