2024年11月22日( 金 )

ビジョンなき法人運営の惨状~利権化された名門「筑女」(後)

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学校法人 筑紫女学園

法的根拠のない理事長

 「筑女事件」に危機感を抱き、教職員やOBなどに対して啓発活動を行ってきた元学校関係者A氏は、「僧侶理事長による学校法人経営上の違法犯罪行為を、代々の僧侶理事長が隠ぺい承継してきた」と指摘。「私的自治という奇妙な論理による事実上の学校法人の私物化」が問題の本質であるという。A氏の分析・解説は以下の通り。


 公金による助成によって学校は運営される。私立学校と公立学校では、まったく差異はなく、私立学校は設立当初の学校用地や校舎などの基本財産が私財によっても賄われ、その私財の提供者たちが無償の理事として経営に関与するというだけ。公立学校では、県や市など自治体の教育委員会が監理するが、学校法人の管理監督は監督官庁にある。これは公金が運営に投下される以上、当然のことである。

 学問の自由は基本的権利であり、その意味で大学には私的自治が認められる。しかしそれは学問(法的用語では「学事」)の世界の話で、経営管理の世界には、公金で運営されるかぎり「私的自治」など存在しない。

 しかし、この微妙な差異を監督官庁の官僚は巧みに利用し、あたかも私立学校には私的自治があるかのごとき説明を行う。たしかに外形上、私立学校は理事会による運営であり、理事が全員私人である以上、私的自治かの如き錯覚を与える。しかし実際には、これが学校法人経営の“諸悪の根源”となっている。 いとも簡単に利権に目がくらんだ悪徳理事らの違法行為によって蹂躙され、その具体的な事例の典型が、無償理事の有給化すなわち教育の利権化だ。

 「筑女事件」では本来、学校法人にまったく不要の「顧問弁護士」と、その娘の弁護士が「監事」として不正な利権利益に深く関与していた。不正防止のために制度的には監事制度が存在するが、その監事が悪事の関与者、主導者の1人であった。その不正を糾弾すべき正義派の理事は、5人の弁護士に委任したが、結果として、不正理事らの違法犯罪行為をすべて容認してしまったと言える。

 最初に、一番わかりやすい「理事長選任」について――。民営団体の典型である株式会社の定款の変更は最終的に株主が行う。一方、私立学校の寄附行為の変更について、私的自治のもと、理事会が行うと誤解されがちだが、私立学校法では明確に、寄附行為の変更は認可事項であり、認可は文部科学大臣が行う。

 この寄附行為にもとづいて理事長選任が行われる。「筑女」の場合、理事長は理事の互選により選出すると規定され、理事の選任も理事会で行う。理事と監事を法律上は役員と呼び、役員の変更は寄附行為の変更であって、監督官庁に届出を行い、認可を受けなければ正式なものと認められない。つまり、いくら理事会で決定しようとも、必要な資料を添えて、文科省に届出て、認可を受けなければ、正式な役員変更とはならない。必要な資料とは、適正に選任手続が行われたことを示す議事録などである。

 議事録でもっとも重要なのは、出席理事の署名である。理事会の違法な運営に対し、正義派の理事は議事録に署名しない。悪党理事らは当然、議事録の偽造を図る。もし、作成すれば、私文書偽造罪の犯罪行為となる。「筑女事件」ではかかる文書偽造が氾濫している。文科省に、理事名の開示請求を行ったが、17年3月の段階で文科省に存在する正式な役員名は15年度当初のまま。具体的には、前理事長の笠氏が理事長に就任した時点で終わっていた。つまり、その後、笠氏が理事長を辞任したこと、長谷川氏が理事長に選任されたこと、さらに裁判で選任決議が取消された事実などはまったく監督官庁のあずかり知らぬ出来事となっていた。すべて法的に正式なものではない。長谷川氏の理事長就任(16年6月21日付)は、登記されているが、明らかに偽造書面による犯罪行為といえる。

理事長職の利権化

 次に問題視すべきは、公金の不正領得だ。事件名にすれば、『無償理事長への違法報酬規程事件』である。理事は原則無償。ただ、法務理事(常勤の校長や学長に就任することにより法律で自動的に理事となる理事のこと。世俗的表現で「あて職理事」という)は常勤の理事として有給となる。ただし、給与は常勤の業務に対する報酬で、理事職に対する報酬ではない。「筑女」では、この常勤理事の解釈を勝手に理事長と常務理事に拡大した規定を作成。会計に関する規定として文科省の認可が必要だが、その手続きを経ていない。

 この“もぐりの違法規定”により、理事長職が利権化された。これもまた、人々の法的無知に乗じて、僧侶理事長らが行ってきた違法犯罪行為である。筑女の経営に僧侶たちが必死に食らいつくのもこの利権化の結果であり、僧侶理事たちが教育に事の他熱心であるというわけではない。むしろ筑女の教育的施策はまったく時代のニーズを無視したもので、教職員の力量も時代遅れだ。この結果が学校力を表す「偏差値」に如実に示され、志望者数の減少に現れている。「筑女」の運営は、常に違法犯罪行為の発覚を恐れた僧侶理事らによる多数支配のうえで行われており、常に正義派理事や評議員少数派の弾圧の歴史といっても過言ではない。

(了)
【山下 康太】

<INFORMATION>
代 表:杣山 眞乘
所在地:福岡県太宰府市石坂2-12-1
設 立:1945年7月
基本金:224億3,677万円
教育活動収支:(17/3)49億424万円

 
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