【緊急寄稿】建設業界と行政機関、総ぐるみの偽装問題(1)
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協同組合建築構造調査機構 理事長 仲盛 昭二 氏
鉄骨鉄筋コンクリート造の建物における係数を偽装した不正な構造計算
1つ目は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物の構造計算において、不正に係数(構造特性係数=Ds値)が低減されていたということです。低減された数値を用いることにより、建物の耐震強度が実際よりも高く(強い)見えるように偽装された値が得られる設計になるのです。現在の建築確認では、このような不正な設計は、当然認められませんが、過去も現在も建築確認では指摘されずに、意図的に見逃されていたため、多くのSRC造建物において、この不正な設計が行われ続けていました。
実例をあげれば、私が原告区分所有者側の技術支援として裁判に関わった久留米市のSRC造15階建ての分譲マンション「新生マンション花畑西」(関連リンク参照)でも同じ不正な設計が行われていました。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物の構造計算においては、他にも不正な設計が行われていました。それは、1階柱脚の鉄量の不足です。SRC造の1階鉄骨柱の柱脚がピン柱脚の場合、柱脚の鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の合計)は、柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋の断面積の合計)と同等以上でなければならないと定められています。前述した久留米市の「新生マンション花畑西」では、規定量の48%の鉄量しかありませんでした。このマンションの例では、建築確認審査において不正な設計を見逃した久留米市が、責任回避・自己保身のため、裁判においては、「管理組合が保管している建築確認通知書の図面や計算書は本物ではない」などと、行政庁と思えない無責任な主張をしていました。
豊洲市場でも不正な設計
東京都の豊洲市場の水産仲卸売場棟においても、設計を担当した日建設計が、「保有水平耐力計算における不正な係数の採用」、「1階柱脚の鉄量不足」という不正な設計を行っていたので、私は、東京都や日建設計、国交省、構造技術者団体JSCA(日本建築構造技術者協会)会長に対して指摘および質問をしました。しかし、東京都も日建設計も国交省もJSCA会長も、この不正の事実を認識していながら、技術的・法的に反論することが不可能なため、不真面目な逃げのコメント以外は、責任ある回答をせず、無視・無反応を続けています(指摘してからすでに7カ月経過)。
日建設計広報部のコメントは以下のような内容でした。
2016年12月28日付で、東京都建築主事より、豊洲市場の全街区について、建築物及びその敷地が建築基準関連規定に適合している(建築基準法第七条五項)ことを証する文書である「検査済証」が交付され、建築基準法に基づく構造安全性が確認されました。これらのことより、豊洲市場の建物は合法で適正な設計がなされていると認識しています。
日建設計は上記のようにコメントしていますが、コメントの中にある「検査済証」とは、実際の工事が図面通りに行われているかを確認する完了検査後に交付される書類です。図面と工事の照合が目的なので、設計が適切かどうかを確認するものではないことは、誰にでもわかります。
つまり、不正な設計により作成された図面を基に完了検査を行った場合、たとえ設計が不正であっても、手続きとして「検査済証」が交付されてしまうのです。日建設計は、こんな子供だましの言い訳で言い繕おうとしているのです。これは、不正な設計を行ったことを認識しているからに他なりません。
日本最大手の設計事務所である日建設計でさえ、不正な設計に手を染めていたのです。しかも、豊洲市場の設計時期は、建築関係法規が改正され審査が厳格になった平成19年以降です。法改正後、規準も運用も厳しくなった状況において、日本最大手の設計事務所である日建設計が、堂々と不正な設計を行っていたことが、この問題の根の深さを物語っています。(つづく)
▼関連リンク
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