2024年11月28日( 木 )

中国経済新聞に学ぶ~「習近平思想」新時代強国への指針に

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 10月18日、5年に一回開催される中国共産党第19回全国代表大会が、北京人民大会堂で開催された。習近平総書記は、第18回党大会以来の5年間にわたる成果に関する党活動報告演説を行った。約3時間半にわたる演説の間、最も出現頻度が高かった言葉は「新時代の中国の特色ある社会主義思想」だ。次に多かったのが「中華民族の偉大なる復興」と「中国の夢」。
 24日、2000人以上の党員代表を集めた党大会で、党の憲法に相当する党規約に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」が最終的に承認された。
 1949年、共産党が政権を樹立して以来、今日にいたるまで、中国で思想といえば「毛沢東思想」と決まっていた。「毛沢東思想」が党規約に明記されたのは1945年延安で開催された第7回党大会の時だ。毛沢東は「革命理論」―「農村から都市を包囲する」―で、中国革命を成功に導いた。また、毛沢東は建国以来、国内の社会主義・共産主義の貫徹を試みた。
 他方、「改革・開放」を提唱し、中国を大きく変えた鄧小平でさえ「鄧小平理論」はあっても「鄧小平思想」を持たなかった。鄧小平が「大躍進」後の「経済調整期」に、「白猫でも黒猫でもネズミを捕るのは良い猫だ」との「白猫黒猫論」を展開したのは有名である。
 そもそも習近平主席は、就任以来、華々しい業績があった。この5年間、習総書記は改革を断行する一方で、イデオロギー分野にも力を入れ、中国共産党が堅持しているマルクス・レーニン主義の学習の必要性も説き、「理念の党」である共産党の原点に戻ることを強調した。
 けれども、習総書記の思想とは、一体どのような思想があるだろうか。
 習近平思想とは、経済・政治・文化・社会・生態文明建設の「五位一体」を目標にし、その過程で小康(豊かな生活)、深化改革、為法治国(法治主義)、従厳治党(厳格な党管理)の「四つの全面」戦略を推し進めるものだ。一言で「中華民族の偉大な復興」が至上課題だ。そのためには強力な推進力が必要なので権力集中が必須だというものだ。
 つまり、習近平思想の骨格は、「四つの全面」と「五位一体」である。
まず「四つの全面」とは、

 一、小康(ややゆとりのある)社会の全面的建設を、初めて「中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現する要の一歩」と位置付けた。

 二、「改革の全面的深化」の総目標を、初めて「中国の特色ある社会主義制度を整備・発展させ、国家の統治体系と統治能力の近代化を推進する」ことと確定した。

 三、「全面的な法による国家統治」を、初めて「全面的な改革深化」の「姉妹編」とし、「鳥の両翼、車の両輪」として位置付けた。

 四、「全面的な厳しい党内統治」の道が初めて示され、「厳しい党内統治の系統性・予見性・創造性・実効性の増強」が求められた。

 二番目の「五位一体」とは「経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、生態文明建設」の五つの総体的な配置によって中国の特色ある社会主義理論を思想的に武装統一して行こうという考え方である。
 「四つの全面」と「五位一体」から習総書記が何を考えているか、全てではないがうかがい知ることができる。それも、二つの100周年、2021年「中国共産党創立100周年」までに小康社会を全面的に築き上げること、そして2049年の「中華人民共和国建国100周年」までに、富強、民主、文明、調和の社会主義現代化国家を築き上げるために、「四つの全面」(小康社会の全面的完成、改革の全面的深化、全面的な依法治国、全面的な厳しい党管理)に関する取り組みを行って、社会主義強国を作り上げ、「中国の夢」を真に実現するというものでもある。
 習総書記は党大会の開会式の演説の中でひときわ強い印象を与えた「站起来、富起来、強起来!」という言葉だ。
「站起来(立ち上がる)」とは中華民族が(アヘン戦争以来の)長い屈辱の歴史から遂に立ち上がったことを意味し、1949年10月1日に新中国(中華人民共和国)が誕生した日を指す。これは「毛沢東時代」だ。
 「富起来(豊かになる)」とは、1978年に鄧小平が「改革開放」を唱えてから中国が豊かになり始めた時期を指す。これは「鄧小平時代」だ。
 「強起来(強くなる)」とは「毛沢東時代」も「鄧小平時代」も終わり、新たに中国が経済強国、軍事強国として「強国化」した時代で、これを「習近平時代」と位置付けている。
 つまり、この「站起来、富起来、強起来!」というフレーズは「時代区分」を表した言葉ということができ、「習近平時代」を「新時代」と位置付けていることを証明する論理構成のキーワードになっている。
 過去の指導者も自らの理念を党規約に盛り込むことに成功しているが、最も権威の高い「思想」の名称で自らの名前と共に規約に掲げられた指導者は毛沢東以来いない。
 「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を明確に党の規約に入れるのは、習総書記は3期目を狙っているという観測もあるが、いつかは退任する。習総書記は強い姿勢で改革に臨んだが、次の代の指導者も自分と同じようにするかは分からないし、指導者の交代によって組織が弛緩する可能性も否定できない。そうしたことを避け、これまでの成果・実績を守るため、将来的には「ポスト習近平」時代の党員・幹部が守るべき原則として「習近平思想」を盛り込んだ。
 毛沢東が中華人民共和国を建国し、鄧小平が改革開放を提唱したと位置づければ、習近平は毛沢東と鄧小平を超えて、社会主義国家・中国を中華民族の偉大なる復興へとつなげ、1921年の結党以来の100年の夢を実現させた大人物として位置づけようという構想が浮き出てくる。その意味で、習総書記は「毛沢東と並ぶ存在」に格上げされるといっていいだろう。


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