2024年12月05日( 木 )

どんな荒波も乗り越える結束力 社内改革で社員が輝ける環境整備へ(中)

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(株)益正グループ

 1993年11月、博多駅前に「居酒屋レストラン益正」を開業後、福岡県内で複数の飲食店を展開する(株)益正グループ。時代の変化にともない栄光と挫折を経験してきた同社だが、脱・居酒屋の取り組みで業績は回復基調にある。創業者であり、現在も現場の最前線でリーダーシップを取る草野益次社長に現在までの取り組みと今後の戦略を聞いた。

深刻な人員不足もおもてなしでカバー

(株)益正グループ 草野 益次 社長

 居酒屋業態はアルコールを中心とした運営に固執するあまり、時代の変化に付いていけずに苦戦を強いられることもある。食を中心とした業態にドラスティックに変更させたのは、草野社長の感性によるものだろう。

 飲食業界は深刻な人手不足に悩まされている。人手が足りずに閉店したり営業時間を短縮したりする店もあるほどだ。各社とも知恵を絞り、働きやすい労働環境をつくるための改善を日々行っている。そのようななか同社の新卒採用はとてもユニークだ。同社では、就職フェア、求人広告などで企業説明会・面接に来る受験者には事前に好きな音楽や色などを聞くという。面接時に待合室で受験者の好きな音楽を流し、好きな色のウエルカムドリンクを提供するというものだ。当然、受験者は驚く。面接のつもりで来てみれば、いつの間にか接客を受けているからだ。「最初におもてなしを感じるはず。リーフレット(会社案内)もその人のオリジナルのデザイン。大変だけどやっている」(草野社長)。受験者1人ひとりにつくるリーフレットも、もし、その人が会場に来なければ破棄する。手間はかかるが、それも優秀な人材を採用するためには必要なことだと草野社長は強調している。

 また、課題だった人材育成も現在は7人の幹部候補生が育っているという。「経営幹部を入れて毎月会議を行っているが、彼らは成長していると実感している。長年勤めている社員も増えてきた。自分たちが会社を支えている。やれば変えられる。大きな会社ではないから自分たちでポストも狙える、と思えるような土壌づくりができているのかもしれない」。

15年前にクレド導入全員が朝礼で実践

社員に携帯させ、いつでも見れるようにしている益正グループのクレド

 社員教育のために、同社は15年前から「クレド」を導入している。クレドとは会社の経営理念などが綴られたしおり。草野社長がリッツカールトンのクレドを見て即座に導入を決めた。今までに3回改訂し、直近では2年前に現在の内容に切り替えている。スタッフ全員が所有し、本社や各店舗では毎朝朝礼時にクレドの一部を従業員らで唱和している。3つ折のしおりには両面にぎっしりと経営理念が詰め込まれており、「MISSION たくさんの笑顔をつくる」を皮切りに、合言葉「MASTARS(マスターズ)」などが記載されている。MASTARSは、「M」EAL=食事、「A」RT=芸術、「STARS」=社員を意味する言葉で、“芸術のように、心に響く”という意味がある。プロフェッショナルとして食に対する思いを表現した合言葉だ。同社の基本理念は「10さ」で、安さ・早さ・おいしさ・素材の良さなどの10個の「~さ」が記されている。また、「10の力」(普遍性持続力・変化対応力・伝達力など)が具体的に記され、最後の人間力は「MASTARS5ヶ条」として、人との接し方の心得が記されている。同社の目指している方向性がわかりやすく記されている。

 「クレドはピンチの時や落ち込んだ時に読み返す。私が好きな言葉、大事なものをすべて入れている。本社ではクレドを毎日読んでいる。店舗でも唱和する。基本に立ち返って仕事に取り組むこと。それがないとブレてしまう」(草野社長)。どのような状況に置かれようとも、常に慢心せず基本に立ち返る。そのベースとなるのがクレドである。これまで荒波が押し寄せても乗り越えられた背景には、クレドによる社長を始めとした社員の意思統一があったようだ。

(つづく)
【矢野 寛之】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:草野 益次
所在地:福岡市中央区赤坂1-4-27
設 立:1996年4月
資本金:5,000万円
売上高:(17/3)15億1,940万円

 
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