日本のネトウヨを手玉に取るバノン前米主席戦略官(前)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦
(2017年12月18日)トランプ政権の主席戦略官を8月まで務めていたスティーブ・バノンが、何度か来日している。12月16日、17日には、都内・渋谷でJCPACというアメリカの草の根保守系の政治団体の日本支部のキックオフ会合に登場した。「ジャパンタイムズ」によるとバノンは東京かソウルに自身が編集主幹を務める「ブライトバート」の支局を置きたいとも話したという。ブライトバートは、アメリカの右派言論界を席巻したニュースサイトで、その編集方針は「白人至上主義」とも近い。
こういう自国における多数派の言語集団や民族集団の主導権を最優先する考えかたのことを「ネイティヴィズム」という。英語を主たる言語をするアメリカ人のことを日本人は「ネイティブ(・スピーカー)」と呼ぶがあのネイティブである。ネイティヴィズムというのは、「氏や素性がすべて」という考え方だ。余談だが、その対義語は人間というのは生まれに関係なく平等に変化の可能性をもつとする「ビヘイビアリズム」である。
バノンが登場したJCPACのイヴェントに登場した人物を見てみると、アメリカ側ではバノンのほかに、マット・シュラップという人物がいる。この人物が今のアメリカの草の根保守、ネイティヴィストの元締めというべき存在で、アメリカ保守連盟(ACU)議長を務めている。
ただ、それ以外の登壇者はまったくパッとしない。たとえば、FOXニュースなどでは知られた顔のゴードン・チャンという評論家がいるが、この人物は2001年に『やがて中国の崩壊が始まる』(草思社)という本を出した人物だ。だが、彼の予測はまったく当たっていない。今も相も変わらず、中国崩壊論を吹聴している。他にはアメリカで有名な論客は登場せず、アメリカ人でもたとえば、元沖縄海兵隊のロバート・エルドリッジのような日本のネット右翼(つまり日本のネイティヴィスト)にはよく知られている人物や、ランス・ガトリングといった福島原発事故の時に多少名前が出た人物がいる程度だ。
日本側の面々は、田母神俊雄、西村幸祐、百田尚樹、金美齢、小川榮太郎、石平といった、安倍政権の応援団のネトウヨにしか知られていない面々がメインで、まともなジャーナリストといえそうなのは元NHKの木村太郎、落合信彦の息子の落合陽一、野口悠紀雄あたりだ。さらに安倍政権の佐藤正久外務副大臣が参加者リストに入っている。
このJCPACは産経広告社内に本部があるようだが、産経新聞の雑誌「正論」にも広告が出ていた。産経記者の有本隆志も参加しているので、産経新聞の「準社ものイベント」なのかもしれない。
バノンは、このイベントに登場して発言した中では、「アメリカは中国の属国」になると言った部分が注目を集めたようだが、一方で、バノンが「北朝鮮の行動に一義的な責任があるのは中国だと(国家安全保障戦略文書に)記されると思う」とかたったことも重要だ。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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