波乱模様の経済界(1)~携帯電話業界 楽天が第4の携帯会社に、その勝算は?(前)
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IT大手の楽天が携帯電話事業に参入する。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクグループの大手3社に対抗する第4勢力となる。3社の寡占で高いとされる通信料料金が値下げで下がる可能性がある。日本の携帯市場は新たな局面に入る。楽天に勝算はあるか?
楽天、自前の通信網と基地局を携帯電話事業に参入
楽天は2017年12月14日、自らの通信網で2019年の携帯電話事業参入を目指すと発表した。2018年1月に自ら回線網や基地局をもつ携帯電話事業会社を設立し、総務省が新たに携帯電話事業者向けに割り当てる電波の取得を申請する。認可を受ければ、19年中にサービスを始め、1,500万人以上の顧客獲得を目指す。25年までに最大6,000億円を投じ、基地局整備を進める計画だという。
日本の携帯電話市場は大手3社の寡占化が進んだ。大手3社のシェアは、NTTドコモが40.8%、KDDI(au)が28.3%、ソフトバンクが22.2%。3社で91.2%を占める(2017年6月末時点)。8.8%が格安スマホ事業者だ。
格安スマホ事業者は大手携帯3社から回線を借り受け、設備投資がいらない分、大手と比べ半分以下の値段で通信サービスを提供する。総務省は大手携帯3社に続く「第4の勢力」として位置づけ、参入を後押しした結果、事業者数は668社にのぼった(総務省調べ、16年12月末時点)。
楽天は14年からNTTドコモの回線を借りて格安スマホ事業の「楽天モバイル」を始めた。17年11月には格安スマホの「フリーテル」を5.2億円で買収し、契約件数は140万件になった。
携帯大手3社の利益水準は国内有数の規模を誇る。しかし、楽天モバイルなどの格安スマホ事業はNTTドコモの回線を借りるため、NTTドコモに支払う金額と利用者から徴収する金額の差額しか儲からない。利益は微々たるものだ。しかも、大手3社が格安プランを打ち出したことで、格安スマホへ流出する動きが止まった。楽天は自前の回線をもつことで、携帯電話で大きな利益を得ることにしたわけだ。
それにしても、なぜ、携帯電話なのか。携帯電話の契約数は日本の人口をとっくに超えた。ガラゲーからスマホへの切り替えも終わった。典型的な成熟市場で、成長の余地はない。楽天が携帯電話事のへの参入は5年遅れた。
イー・アクセスの買収に出遅れた楽天
2012年10月1日、携帯電話3位のソフトバンクは、同4位のイー・アクセスを買収すると発表。株式交換方式で全株式を取得し、2013年2月に完全子会社化した。買収価格は、株式取得額1,802億円と純有利子負債の1,849億円の合計3,651億円だった。
イー・アクセスは07年に携帯電話事業に参入した。ソフトバンクの孫正義社長は、イー・アクセスの千本倖生会長に「強烈にラブコールした」といい、ソフトバンクから提案を持ちかけたことを明らかにした。
米アップルの「iPhone(アイフォーン)5」の発売をきっかけにスマホの通信量が爆発的に増大する時期だ。イー・モバイルの携帯契約件数は420万件。ソフトバンクの契約件数(3,491万件)と合わせると3,911万件。NTTドコモ(6,063万件)に及ばないものの、KDDI(3,589万件)を抜き業界2位に躍り出た。ソフトバンクがイー・モバイルを買収することで、携帯電話業界は3社に集約された。
その後は明暗を分けた。アップルのアイフォーンを先行販売し1人勝ちしてきたソフトバンクの契約件数は3,931万件にとどまり伸びが止った。ドコモとKDDIもアイフォーンの販売を開始。NTTドコモは7,488万件と快走。KDDIは傘下のUQモバイルと両輪で巻き返して、4,854万件と急増。ソフトバンクに大差をつけて突き放した(2017年9月末時点)。
(つづく)
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