【衆院選2026福岡11選挙区の結果総括】福岡で可視化された高市現象 与党圧勝が示す日本政治の転換点
2月8日に投開票された衆院選で、「責任ある積極財政」を掲げた自民党が戦後最多となる316議席を獲得し、自民党と日本維新の会を合わせた議席は4分の3を超えた。一方、立憲民主党と公明党が合流した中道改革連合は改選前から大きく減らし、49議席となった。福岡県内でも自民党が11選挙区のうち10選挙区で勝利した。少数与党から一転、圧倒的多数を形成した高市人気や、野党の低迷要因などを分析する。
県内でも高市人気が席巻
期待を自民支持に変える
衆院選の結果、福岡県内11選挙区において、自民党が10選挙区を獲得し、2、10、11区では中道改革連合や日本維新の会がもっていた議席を奪還した。
全国的な注目を集めたのが、田川市や行橋市などの福岡11区。与党対決となったが、自民の武田良太元総務大臣が、前回選で敗れた維新の村上智信氏らを破り、返り咲いた。選挙戦の1月30日、高市早苗自民党総裁(首相)が行橋市を訪れ、武田氏への応援演説を行った。地元に貼り付いて地域をくまなく回り、各種メディアへの出演やSNSの発信も強化した。また、武田氏の応援集会には公明党市議が参加するなど広範な支持を形成した。自治体関係者も「インフラ整備など地域振興には中央とのパイプが必要」と語るなどベテラン復活に対する地元の期待は大きい。
福岡・北九州両市は旧民主党時代から野党勢力が一定の影響力をもっていたが、今回、中道から立候補した旧立憲議員全員が落選した。福岡2区では、自民前職で元防衛副大臣の鬼木誠氏が、中道前職の稲富修二氏らを制し議席を奪還した。警固公園で行われた自民の合同演説会には高市総裁も来援し、高校生や若い女性など数千人が集まった。稲富氏は立憲の地方議員や連合などの支援で選挙戦を戦ったが、公明との合流による支持者離れが大きく響いた。また、2区には元佐賀市長・木下敏之氏が参政党から立候補しており、保守票の奪い合いになるとみられたが、鬼木氏は各種団体の支援だけでなく、街頭活動に力を入れSNSでの動画発信を展開。若い世代の支持も獲得した。
1区や3区は自民前職に中道が挑む構図だった。1区の自民・井上貴博氏は、高市政権の首相補佐官を務めており、博多区を中心に強固な地盤をもつ。中道・丸尾圭祐氏は、連合や創価学会の支援だけでなく、辻立ちや演説による草の根選挙を展開したが、無党派層への浸透が進まなかった。3区においても自民前職・古賀篤氏と、中道新人で元県議会副議長・仁戸田元氣氏が対峙したが、維新や共産党も立候補し票が分散したことや、支持層は高齢者中心で現役世代への広がりを欠いた。
北九州市の9区・10区は工業地域で福岡市とは異なる地域性だが、9区では無所属の緒方林太郎氏が自民の三原朝利氏らに圧勝。一方、10区は自民の元県議・吉村悠氏が幅広い層に浸透し、中道前職で元立憲県連代表の城井崇氏らに勝利した。自民にとっては念願の北九州の議席奪還となった。
福岡都市圏の4区・5区は自民前職が議席を守った。4区は保守分裂となった前回と異なり自民・宮内秀樹氏が安定した選挙戦を展開。国民民主党の許斐亮太郎氏らを制した。5区は自民・栗原渉氏に昨夏の参院選にも立候補した国民の川元健一氏や社民党の那須敬子氏らが挑んだが、支持が広がらなかった。
県南の6区・7区も自民優位という点は共通するが、自民内の勢力争いもあり必ずしも一枚岩ではなかった。6区は自民・鳩山二郎氏が5選となったが、前回選と同じく久留米市議会の一部自民系市議は鳩山氏の選挙活動と距離を置いていた。7区は自民前職・藤丸敏氏が中道新人の亀田晃尚氏との一騎打ちを制したが、農政連関係者が従来ほど自民支援に力を入れなくなった。それでも5万票近い大差をつけたのは、「組織戦と高市人気が追い風となった」(八女市議)ためだ。
8区は、自民党副総裁・元首相の麻生太郎氏の地盤であり、全世代への浸透や維新や参政支持層も含めて幅広く票を獲得したが、れいわ新選組の沖園理恵氏が共産党との共闘を行い、事実上の野党統一候補として戦った。
若年層の高市人気 SNSが動かした票
選挙前には旧統一教会問題や政治とカネが影響するとの見方もあったが、結果、影響は極めて限定的だった。
高市人気について20代30代に話を聞くと、「緊縮財政の転換」「おじさん政党のイメージだった自民が高市さんで変わるのではないか」との期待感があると語った。中道が伸びなかったのは、イメージ戦略を欠いたことが要因の1つだろう。
一方でSNSが選挙情報のツールとして定着し、動画を見て投票に行く若い世代が増えたことにはプラスの面もある。投票率は前回選の53.85%を上回り、56.26%であった。AIエンジニアの安野貴博参議院議員が率いるチームみらいが11議席を獲得するなど、新しい票田の存在感が際立つ結果ともなった。
自民党だけで衆院の3分の2超を獲得したことはまさに高市一強だが、この状況は、国論を二分する法案であっても、大きな抵抗なく国会を通過しかねないことを意味する。高市首相は長期政権を視野に入れているとみられるが、強い指導力だけでなく、異論を受け止め、慎重に判断を行う政権運営が求められる。
【近藤将勝】








