2024年12月23日( 月 )

日本はどこに向かうのか 対米従属・安倍政権を打破するには(後)

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政治経済学者 植草 一秀 氏

反自公勢力結集で政治刷新を実現すべきだ

政治経済学者 植草 一秀 氏

 日本が進んでいる方向は、明白に米国流の弱肉強食社会、弱者切り捨て社会である。そして、政治は主権者国民の利益ではなく、ハゲタカ巨大資本の利益極大化のために行動している。この延長上にある日本社会の未来は暗い。暗黒と言って過言でない。

 安倍政権は主権者国民の利益ではなく、ハゲタカ巨大資本の利益極大化のために行動し、その結果として、日本社会は完全に米国化されることになる。ここで問われることは、日本の主権者が、このような未来を望んでいるのかどうかである。

 既述したように、安倍政権の支持基盤は決して盤石でない。安倍政治に対峙する主権者と安倍政治を支持する主権者が、ほぼ拮抗している。

 国政選挙において、主権者国民が未来の方向を選択できる環境が整えられれば、主権者が真逆の進路、未来を選択する可能性は決して低くない。むしろ、日本の主権者は、現在の方向とは真逆の方向を選択する可能性が高いと考えられる。

 この意味で、日本はいま、極めて重要な分岐点に立っているといえる。ここで主権者が選択権を行使できる環境を整えることができるか、それとも、これまで同様に主権者に選択権が生じない環境が持続してしまうのか。その差は決定的に大きいと言わざるを得ない。

 原発、戦争・憲法、消費税、TPP、米軍基地という基本問題について、安倍政治に対峙する政治勢力が結集し、もう1つの選択肢が主権者に提示されていない最大の原因になってきたのが、旧民主党・民進党の「あいまい路線」である。

 旧民主党・民進党内には、2つの異なる政党が同居してきた。つまり、安倍政治対峙勢力と安倍政治支持勢力が同じ政党のなかに同居してきたのである。野党第一党がこのようなあいまい状況にあったために、安倍政治対峙勢力の結集、大同団結が妨げられてきた。

 ハゲタカファースト政治を推進する既得権勢力は、意図的に野党第一党の民主党、民進党を、このあいまい状態にしてきたのだと考えられる。「与党」と「野党」の間の「ゆ党」の状況が誘導されてきたが、実効支配権を有してきたのは自公支持勢力だった。

 09年には自公対峙勢力が主軸となって鳩山政権を樹立したが、これを自公支持勢力が破壊して実権を強奪した。その後は、自公支持勢力が民主党と民進党を実効支配し続けてきたのである。

 また、ハゲタカファースト勢力は、自公補完勢力に属する「第三極」政党を創設してきた。これらの行動は、すべて、自公対峙勢力の結集、大同団結を阻止するための工作活動であったと言ってよいだろう。

 そして、この工作活動を裏側から支えてきたのが「連合」である。連合は労働組合の連合であるが、現実の連合は、電力、電機、自動車、鉄鋼の「御用組合連合」が支配権を握っている。「御用組合連合」は実態としては自公勢力支持勢力であり、結局のところ、民主党、民進党を自公支持勢力の連合が支配してきたといえるのだ。

 この現状を打破することが日本政治を刷新するための出発点になる。17年10月総選挙での希望の党と民進党合流強行の副産物として、立憲民主党が創設された。懸案の民進党の分離・分割が部分的に実現したのである。この民進党の分離・分割を完遂することが喫緊の課題である。

 反自公勢力結集を警戒する既得権勢力は、連合の画策による民進党完全分離・分割阻止の工作活動を展開している。このせめぎあいを乗り越えて、民進党完全分離・分割を完遂することが、日本政治刷新を実現できるのかどうかの試金石になる。

 多数の主権者が望む日本の針路は「戦争と弱肉強食」ではなく、「平和と共生」である。「戦争と弱肉強食」の真逆の進路である「平和と共生」の方向に日本の進路を転換できるのかどうか。現在の政治状況を転換し、自公勢力対反自公勢力の対峙、二項対立の図式を構築できるかどうか。日本の未来はこの1点にかかると言って過言ではないだろう。

(了)

<プロフィール>
植草 一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。また、政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。

 
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