2024年11月22日( 金 )

歴代社長の「財界総理になりたい」という病~東芝(前)

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 (株)東芝は、日曜夜の国民的アニメ「サザエさん」(フジテレビ系)の番組スポンサーを2018年3月末に降板する。長寿番組であるサザエさんの放送が始まった1969年10月からCMを提供してきた。経営再建の一環として経費削減を進める。東芝凋落を象徴する出来事となった。

A級戦犯と指弾された西田厚聰氏の反撃

 (株)東芝は2017年10月20日、内部管理体制の改善報告書を公表した。報告書では、過去の経営方針が歪んでいたと指摘する。「当社で発覚した不正会計などについて、西田(厚聰)氏、佐々木(則夫)氏、田中(久雄)氏という財務会計の厳格さに対する真摯な認識が欠けた歴代社長によって目標必達へのプレッシャーが繰り返され、短期的利益を過度に追求する方針を追求してきたことが問題として挙げられる」。

 なぜ、3社長は短期的利益を過度に追求してきたのか-。報告書は断じた。「歴代社長に対するライバル意識に強く執着していた」ことにある、と。

 東芝を破綻に追い込んだA級戦犯と名指された西田厚聰氏が反撃に出た。『週刊ポスト』(17年11月24日)は、ジャーナリスト・児玉博氏の「“東芝の戦犯”西田厚聰氏が初激白『私は佐々木に騙された』」という記事を掲載した。

 西田氏は、東芝壊滅の責任は自分にないという。では誰のせいだというのか。西田氏は、09年に社長職を引き継いだ佐々木則夫氏の責任を明言した。佐々木氏について、

〈「どういう人間かって?もうね、自分のことしか考えない。しかも、自分が一番正しい、自分の考えがなんでも正しいとする人間ですよ」〉。

 この発言に思わずのけぞった。西田氏は自分自身のことを言っているのではないかと思ったからだ。西田氏は“お公家集団”と揶揄される東芝に紛れ込んだ野武士だった。

 東京大学大学院時代に、来日してきたイラン女性と結婚。イランに渡り、東芝と現地企業の合弁会社に就職した。能力を見込まれ、東芝本社に入社。時に31歳。パソコン事業を立ち上げ、大成功を収め、社長の座を射止めた。ロートルの途中採用組から、社長に昇りつめたのだから、超異端児だ。アクと押しの強さで「東芝の田中角栄」と称された。

社長交代会見で会長が社長を罵倒

 現役社長と前社長が不仲なのは、どの会社でもみられることだ。現役社長は、前任者の方針を否定することで、違いを際立たせようとするからだ。東芝も例外ではないが、その過激さは際立っていた。

 西田氏と佐々木氏の抗争は、東芝の内紛劇の白眉だ。会長の西田厚聰氏と社長の佐々木則夫氏の確執が火を吹いたのは、13年の社長交代。西田氏は会長に留任し、社長の佐々木氏は新設の副会長に追いやられた。13年2月26日の社長交代の会見は異様なものだった。

 西田氏は社長の条件として「さまざまな事業部門を経験していることと、グローバルな経験をもっている」ことを挙げ、「1つの事業しかやってこなかった人が東芝全体を見られるのか」と発言した。原子力畑一筋で、海外経験が少ない佐々木氏を公然と批判した。

 「業績を回復し、成長軌道に乗せる役割は果した。ちゃんと数字を出しており、(赤字経営で引責辞任した西田に)文句をいわれる筋合いはない」と佐々木氏は反論した。公の席で、会長と社長が互いを批判するような言葉を口にするのは異常だ。

(つづく)
【文・構成:森村 和男】

<COMPANY INFORMATION>
(株)東芝
代 表:綱川 智
所在地:東京都港区芝浦1-1-1
創 業:1875年7月
資本金:4,999億9,999万7,000円
売上高:(17/3連結)4兆8,708億円

 
(後)

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