家電量販最大手の(株)ヤマダホールディングス(群馬県高崎市、山田昇代表)と(株)エディオン(本社:大阪市北区、本店:広島市中区、久保允誉代表)が、経営統合を検討していることが明らかになった。全国的には、家電量販業界における大型再編として注目される案件だ。だが、九州、とりわけ福岡で見ると、この統合検討は別の意味をもつ。
ヤマダHDとエディオンは経営統合について検討していることを認め、6月5日の取締役会で決議する予定としており、持株会社を設立して、その傘下に両社が入る案を軸に検討しているとされる。ヤマダHD の2026年3月期の連結売上高は1兆6,918億円、エディオンは26年3月期の連結売上高は7,937億4,600万円で、統合が実現すれば、売上高は単純合算で約2兆5,000億円規模になる。
九州で注目すべきなのは、ここに旧ベスト電器の店舗網が重なることだ。ベスト電器は福岡市に本社を置き、九州を地盤に成長した家電量販店だった。ヤマダ電機は2012年にベスト電器を子会社化し、17年に完全子会社化した。さらに21年7月には、ヤマダデンキを存続会社、ベスト電器や九州テックランドなどを消滅会社とする吸収合併を実施している。
もっとも、消費者の目に映る店舗ブランドとしては、現在も「ベスト電器」の看板が残る。福岡にとって今回の統合検討は単なる「ヤマダとエディオンの統合」ではない。ヤマダデンキ、ベスト電器、エディオンという、地域の生活圏で別々に見えていた3つの家電量販ブランドが、同一陣営に入る可能性がある話になる。
福岡県内のヤマダデンキ、ベスト電器、エディオン
店舗地図を重ねると、その意味はよりはっきりする。福岡市内、北九州市、久留米市、筑紫野市、春日市、飯塚市、宗像市、大牟田市など、県内各地にはヤマダデンキ、ベスト電器、エディオンの店舗が点在する。これらはそれぞれ独立した競争相手として見られてきたが、統合が実現すれば、同じグループ内で商圏をどう分担するかという問題に変わる。
焦点の1つは、店舗の重複だ。同じ生活圏に複数ブランドが立地する地域では、すぐに店舗整理が進むとは限らないものの、将来的には店舗ごとの役割分担が問われる可能性がある。大型家電の販売を担う店舗、修理・アフターサービスを強化する店舗、リフォームや住宅設備を前面に出す店舗、携帯・通信・法人営業を担う店舗など、同一グループ内で機能を分ける余地も出てくる。
もう1つの焦点は、ブランドの扱いだ。ヤマダデンキは全国最大手としての規模をもち、ベスト電器は九州で長く親しまれてきた地域ブランドである。一方、エディオンは西日本を中心に展開してきた家電量販店で、フランチャイズ店舗や住宅関連事業ももつ。
家電量販店は、もはや家電だけを売る業態ではない。ヤマダHDは家電に加え、住宅、住建、金融、環境関連事業を展開している。26年3月期決算では、FCを含むグループ店舗数は8,774店舗とされ、LIFE SELECTを中核とした店舗開発改革を進めている。 エディオンもリフォーム、住宅関連、通信、モバイルなどを事業領域に含めており、両社の統合は、家電販売の規模拡大だけでなく、生活関連サービスの再編としても見る必要がある。
人口減少が進む地方市場では、家電量販店同士が単純に出店競争を続ける時代は終わりつつある。買い替え需要の取り込み、修理・保証、リフォーム、住宅設備、通信、法人向け販売、地域密着型サービスをどう組み合わせるかが店舗の生き残りを左右する。福岡県内に並ぶヤマダ、ベスト、エディオンの店舗地図は、家電量販業界の全国再編が地域の商圏にどう現れるのかを示す、わかりやすい材料になるだろう。
どの店舗を残すかではなく、どの店舗にどの役割をもたせるか。人口減少下の小売業が、店舗網を販売拠点から生活サービスの接点へ変えていく過程として、福岡におけるヤマダHD+ベスト電器+エディオンの行方が注目される。
【寺村朋輝】









