九州の観光産業を考える(44)OLC/DISNEY 新機軸は新たな波間へ
参入続く大型クルーズ船
前年比21%増の183回となり過去最多
我が国のクルーズ需要は、高まりを見せているようだ。日経新聞オンライン(2026.1.5)によると、25年は四国へのクルーズ船寄港回数が前年比1.8倍の189回、鹿児島県への寄港回数が前年比21%増の183回と、いずれも過去最多となった。なるほど、24年、25年、26年と、新就航クルーズ船のニュースが続く。「三井オーシャン・フジ(総トン数/T=3万2,477t、乗客定員/P=458名、乗組員数/C=330名)」が24年12月に就航。もとは「シーボーン・オデッセイ」というバハマ船籍の外国船だったが、改装のうえ日本船へ転籍したものだ。25年7月には「飛鳥Ⅲ(T=5万2,265t、P=740名、C=470名)」が就航し、26年9月には「三井オーシャン・サクラ(T=3万2,477t、P=458名、C=おそらく330名)」の就航が予定される。これらの船は日本マーケットへの参入にあたり、全室ベランダ付き、全室バスタブ付き、大浴場設置、1人乗船への考慮、といった特色をそれぞれ競う。
現況、「MSCベリッシマ(T=17万1,598t、P=5,686名、C=1,536名)」「ダイヤモンド・プリンセス(T=11万5,875t、P=2,706名、C=1,100~1,238名)」「コスタ・セレーナ(T=11万4,500t、P=3,780名、C=1,100名)」といった海外船籍のクルーズ船が日本発着で就航し、飲食、エンターテインメントなど、オールインクルーシブの船内サービスと寄港地観光の旅行スタイルが好評なのか、26年秋には「ノルウェージャン・ジェイド(T=9万3,558t、P=2,352名、C=1,037名)」が、27年春には「サファイア・プリンセス(T=11万5,875t、P=2,670名、C=1,100名)」が日本発着クルーズに加わる予定。
そうしたなか、筆者がとくに関心を寄せるのは、28年度就航予定のオリエンタルランド社(OLC)によるディズニークルーズだ。
国内最大級のエンタメ船
東京ディズニーリゾートは、手持ちの浦安の地でのスクラップ&ビルドにも限界がある。かつて地方進出の話もいくつかあったが、雲散霧消した。OLCは新規事業開拓へ、眼前に広がる海原へ目を向けたわけだ。もともと米国ディズニー社は、カリブ海などをめぐるディズニークルーズを1998年以来実施しており、現在は9隻の専用船を運航している。新顔となるOLC専用の船は、現在ドイツで建造中。T=14万tでP=約4,000人(客室数約1,250室)と、国内最大のクルーズ船となる見込みだ。
ツアーは東京国際クルーズターミナルを主要拠点に、2~4泊程度のショートクルーズを若者や家族層向けに販売し、料金は1人あたり10万円台を想定。年間で約40万人の乗船客を見込む。
カリブ海のディズニークルーズは、専用に開発した島へ立ち寄って異世界を体験させるが、東京湾沖合の周航海域だとそうした旅程は考えにくい。当面は、ディズニーの既存ソフトを船内で濃厚に体験させる無寄港ツアーになる。とはいえ、航海日数を伸ばし、日本独自の特別なクルーズもいずれ検討されよう。ただし、他社のクルーズ船のようにシニア層を中心顧客に日本を周遊し、寄港地でのエクスカーションを繰り返す旅を提供するはずはない。ディズニークルーズとして、ディズニーの世界感に忠実な内容が用意される。さりとてディズニー映画に、日本を素材にしたものは見当たらない。そこで一案を提起したい。
ディズニー流儀をまとう
一層の寛ぎ感を各々打ち出していくのか
1つは、歴史航路編。開業時の東京ディズニーランドに、「ミート・ザ・ワールド」という我が国オリジナルのアトラクションがあった。明治維新の開国期に活躍した3人、坂本龍馬(土佐藩)、福沢諭吉(豊前中津藩)、伊藤博文(長州藩)が世界へ目を見開いていく内容だった。ディズニークルーズでは自社作品に由縁が求められるとすれば、ここに日本、高知、大分、山口に所縁を手繰れる。龍馬の亀山社中は、長崎を拠点に活動したこともある。また、龍馬の新婚旅行先が鹿児島県の霧島だったことは、九州へ寄港の際はエクスカーション先として温泉体験も組めそうだ。船内のグルメにも、だご汁、中津からあげ、黒豚料理、芋けんぴ、皿うどんをしれっと提供する。九州方面航路開設の一構想。
もう1つは、南洋航路編。地球温暖化による海の環境変化が著しい。南洋の島々で観察された魚種や海底の様相が、日本の島でも見られるようになった。航路を南方に向ければ、ディズニー映画に登場した島々を想起させる景観や体験機会を、日本領内でも見出せそうだ。ネバーランド(映画『ピーターパン』)、白砂とヤシの木だけの島(映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』)、モトゥヌイ島(映画『モアナと伝説の海』)等々。住民不在の離島でOLCによる一体開発可能な孤島があれば、九州の海原でも演出可能かもしれない。
<プロフィール>
國谷恵太(くにたに・けいた)
1955年、鳥取県米子市出身。(株)オリエンタルランドTDL開発本部・地域開発部勤務の後、経営情報誌「月刊レジャー産業資料」の編集を通じ多様な業種業態を見聞。以降、地域振興事業の基本構想立案、博覧会イベントの企画・制作、観光まちづくり系シンクタンク客員研究員、国交省リゾート整備アドバイザー、地域組織マネジメントなどに携わる。日本スポーツかくれんぼ協会代表。

月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)
ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)








