奇跡のJ1昇格 V・ファーレン長崎 高田明社長の目指すものは(1)
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(株)V・ファーレン長崎 代表取締役社長 高田 明 氏
Jリーグ・J2は毎シーズン有力チームが入れ替わり、当初有力視されていたチームが下位に沈み、ノーマークの弱小チームが躍進するドラマが繰り返されている。とくにJ1への昇格争いは、「まさか」の声が漏れるような快進撃や大逆転劇が相次ぐ、世界でも稀に見る過酷な戦い。2017年4月に高田明氏が代表に就任したV・ファーレン長崎の昇格劇は、そのなかでも白眉といえるだろう。立役者の1人である、高田明代表に話を聞いた。
自動昇格までは想定外だった
――まずは、J1昇格おめでとうございます。I・B夏期特集号の取材で17年6月にお話をうかがった際に「V・ファーレン長崎とアビスパ福岡、いっしょに昇格できたらいいですね」とお話しましたが、長崎は見事自動昇格(2位)、アビスパは残念ながらJ1昇格プレーオフ敗退となりました。正直、6月の段階では「長崎さんは、プレーオフ圏内に入れれば御の字かな」と思っていました。4月の就任の時点では、昇格まで考えていらっしゃったんでしょうか。
高田社長(以下、高田) 社長を引き受けるときには、もちろん昇格を目指していました。でも、自動昇格といわれたらそこは難しいだろうと。昇格プレーオフは過去には2回出ていますから、それだけの力はあるチームです。だから、そこは昇格を狙わないといけないと考えていましたね。
――2015年の昇格プレーオフでは、福岡が長崎に勝って昇格まで勝ち上がりました。
高田 その前は京都でしたね。J2に昇格した年にプレーオフまで行きました。1年おきに、プレーオフ圏内と下位を行ったりきたりしていました。16年は15位でしたから、17年は順番としてはいいということになりますか(笑)。でもリーグ戦が全日程終わってみたら、1位の湘南ベルマーレと勝ち点差は3まで縮まりました。それだけ、実力をつけてきたのだと感じています。
――そうですね、一時は湘南が独走して福岡が何とかついていくという構図でしたが。
高田 得失点差もかなり縮みました。そういう時期というのはあるんですね、サッカーには。
――まさに、そういう時期を逃さずに昇格しないといけないですね。自動昇格が決まったときは、どう思われましたか。
高田 自動昇格を決めたのは41節のカマタマーレ讃岐戦(11月11日)でしたが、数試合前からサポーターや県民の皆さまの「これは昇格決まるのでは」という思いが走っていましたね。それでもまずは一試合一試合。「一日一生」という僕が好きな言葉のように、一戦一戦を大事にしました。選手、監督、スタッフ、そして県民の皆さまも、今日勝たなければ明日はない、という心境でしたね。そういう雰囲気のなかで、讃岐戦を迎えました。
このときも、アビスパ福岡の引き分けと名古屋グランパスの負けというのは想定外のことでした。まさに、奇跡が奇跡を呼んだといえるでしょう。地元のトランスコスモススタジアム長崎(長崎県諫早市)で昇格決定となったのもよかった。多くの皆さまの「V・ファーレン長崎頑張れ」という気持ちに応えることができました。僕が社長に就任したときはまさに倒産の危機で、3億円以上の累積損失があった。そのときから比べたら、多くの皆さまに助けられたと思いました。まさに「長崎の奇跡」だったと思います。
長崎県民一体となっての強力なサポート
――長崎県民からのサポートは、強く感じるところはありますか。
高田 ありますね。長崎県は、ジャパネットの本社がある佐世保などの県北、V・ファーレンが本拠地とする諫早市がある県央、県庁所在地の長崎市がある県南とおおよそ3つの地域に分かれます。どこの県でもそうですが、それぞれの地域性がある。僕が社長を拝命した4月ごろ、佐世保あたりではV・ファーレンに興味がある人はそれほど多くなかった。サッカーよりも、プロ野球のソフトバンクホークスを観に行くという人が多かった。でも、自動昇格の可能性が上がってくると、長崎県内ではどこでも「V・ファーレン頑張って!」「試合見に行きました!」と声をかけてくださる方がすごく増えてきました。今は長崎県全体で「長崎のチームが、J1に行ったんだ」ということを認識していただいているなと感じています。良かったなと感じていますね。
――J1に上がると、日本代表クラスの選手が対戦相手としてやってきますから、一般層への訴求力は非常に高まりますよね。
高田 それはあるでしょうね。13年シーズンにガンバ大阪がJ2でプレーしたときには、観客動員数は1万8,000名を越えました。これが動員数記録だったのですが、先日の昇格決定試合が2万2,000名を超えましたからね。ガンバ大阪との試合での観客の熱狂ぶりはすごかった。今度はJ1に上がって、浦和レッズとか鹿島アントラーズ、川崎フロンターレが来るわけですから、これはもうどうなるんでしょうか。想像つかないですね。これもまたJ1の魅力ですね。
(つづく)
【深水 央】<COMPANY INFORMATION>
代 表:高田 明
所在地:長崎県諫早市多良見町化屋1808-1
設 立:2006年6月
資本金:3億4,000万円
売上高:(17/1)7億4,900万円関連記事
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