2024年12月22日( 日 )

天国と地獄~時間を持て余すリッチ老人層増加中

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 自宅のそばへ2回続けて救急車の臨場があった。まず1件目。斜め前には元校長の役職に就いていた方で90歳を超えていた方が住んでおられたが、自宅で息を引き取られた。息子2人は別に所帯を持ち出入りもなく、音信不通状態。自宅には故人と老妻と娘の3人暮らしであった。この3年間、娘さんが買い物に出るくらいで家のシャッターは閉まっている状態。結局、葬儀は家族葬で済ませ、隣近所にはまったく連絡なしで終わった。

 それから4日過ぎた午後7時半頃、再び隣に救急車。75歳のご主人が病院へ搬送されたのだ。もともと入院していたのを、自宅に戻って静養していた矢先のことであったとか。聞くところによると病院では危篤状態のようだ。お隣で起きた2軒の出来事を紹介したが、それぞれが一戸建てでの生活だ。だが、子どもたちは大半が独立して別の暮らしである。予測するに、あと10年もしたらこの地域の住民たちの60%は成仏され、空き家が目立つようになるだろう。

 会社経営から足を洗って10年になる向井氏は、毎日ひたすらプールで鍛錬していた。最近はプロ指導のもとゴルフレッスンも再開した。「やるべきことを決めていないと1日を無為にしてしまう」と彼は言う。「残された時間を無駄にはしたくない」とも強調する。この10年間で世界の名勝旧跡・観光地を廻りつくした。世界一周のクルージングも体験済み。その向井氏にとって、最近憂鬱なことがある。相性が合わない人物から、夫婦で会食に誘われるのだ。

 この憂鬱感をもたらすのは、元食品会社A社長夫婦。ほかに同じ経営者OB夫婦3組と向井夫婦の合計5組で、月1回定期的に食事会を行っている。そのうちの一組の夫の母が亡くなった。妻は義母の看病から解放されて自由になった。この妻は「初めて自由という喜びを知った」と語ったそうだ。月1回の食事会以外にも、「女同士」の誼(よしみ)で積極的に向井氏の妻にも昼食会の誘いをかけているらしい。女性たちの交流会は頻繁に行われているようだ。

 憂鬱の原因はAが見境なく、誰も彼も紹介することである。向井氏曰く「現役の時なら営業になるかもしれないと名刺を交わしていたが、今は引退してしまって知人を増やす必要もない。紹介された人を会食メンバーとして誘ったり、こちらも誘われたりして、迷惑な話で煩わしい」。向井氏は同様の食事会に3つかけもちしているとか。でも向井さん!!同じ人種は現世にも来世にもいるでしょう。天国でも辛抱が必要だ。

 当人たちの心情はどうあれ、福岡には昔の貴族同様の生活を送っているリッチな老人層が増加傾向にあることはたしかだ。

(登場する人物はすべて仮名です)

 

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