変わりゆく都市・福岡のなかで地域の魅力をどう打ち出すか(後)
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(株)エフ・ジェイ ホテルズ 取締役会長 榎本 重孝 氏
国際的なブランド力を誇る「グランド ハイアット 福岡」を始め、「ハイアット リージェンシー 福岡」や「フォルツァ」シリーズなど、福岡地所グループにおけるホテル事業を担当している(株)エフ・ジェイ ホテルズ。同社は「福岡・九州をもっと熱く、もっと楽しくしたい」「魅力あるまちづくりと地域づくりに取り組みたい」という福岡地所グループの企業姿勢の下、九州ホテル業界のリーディングカンパニーとしての成長を続けている。今回、エフ・ジェイ ホテルズの取締役会長であり、福岡地所(株)の取締役副会長も務める榎本重孝氏に、話を聞いた。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)
高齢者活用で人材確保
榎本 一方で、今の世の中は人材不足で、人件費もどんどん高騰しています。ホテル業態にとってはこの人件費というものが、コスト面で最も頭を悩ませる部分です。業界は人の流動が激しく、各人のノウハウやスキルの蓄積がなかなか進まないことも課題としてあります。高騰する人件費との兼ね合いのなかで、いかに人を留めておけるかが、ホテル経営の大事なところです。
そうしたなか、高齢者の活用というのは、1つ可能性を感じています。65歳から70歳くらいの人間になると、これまでの仕事人生のなかで培ってきたテクニックや経験をもっていますが、そうしたものは年齢に関係なく使えます。弊社でも「ホテルフォルツァ」というシリーズをつくって、ゆくゆくは北海道・札幌や大阪などにも展開していく予定ですが、現地で人員を採用する際に、60歳を過ぎた方を1名採用していくことも検討しています。年齢を重ねている人だと、自身のこれまでの経験も踏まえながら、若い方の意見も冷静に聞くことができます。物事を前に進める際には、誰かスッと一歩引くことのできる人がいれば、冷静な判断をしたうえで事業を進めていくことができますから。
――ハウステンボスは「変なホテル」としてロボットを活用したホテルを展開していますが、同社の澤田社長はやがて全国に広げていきたいと言っています。そうした業態のホテルが台頭してきたときに、既存のホテルはどのように差別化を図っていけばよろしいでしょうか。
榎本 人間がやるうえで労力のかかる大変な作業をロボットが受けもつ分にはいいと思いますが、ロボットはあくまでもロボットです。泊まる人は感情をもつ人間なわけですから、全部がロボットに置き替わっていくというのは難しいでしょう。日常生活を考えても、たとえば掃除などの大変な作業をロボットが代替するように、ホテルにおいても同じような使い方になっていくと思います。たくさんホテルがあるなかの選択肢の1つとしてはいいと思いますが、今のところは話題提供の部分も大きいのではないでしょうか。もちろん、この先もっとAIが発達し、高性能なロボットが登場してくれば、また違ってくるのかもしれませんが…。
――福岡のホテル業界については、どう感じられますか。
榎本 福岡市全体で考えた場合、グランドハイアットのようなハイクラスのホテルが、まだ不足している感はあります。こうした300室クラスのホテルが、もう1つ、2つくらいはないといけませんね。たとえばウォーターフロント地区にはあれだけコンベンション施設がありますから、あのエリアに1つ。あとは大名エリアなどにもう1つくらいあれば、学会や大型のイベント時などの対応を含めて、心配はなくなると思います。
20年先の都市の未来を見据えて
――しかし、つくづく福岡は面白い街になりましたね。
榎本 本当にそう思います。ただし一方で、まだまだ都市整備が不十分なことも感じます。海外からもこれだけ多くの観光客が訪れてくれている今のうちに、次の方策をいろいろと考えていかなければならないでしょう。
思えば、福岡の街も20年というサイクルで、大きな変革を迎えているように感じます。たとえば今から約20年前にキャナルシティやグランドハイアットが開業しましたし、そのさらに約20年前には博多まで新幹線が開通したり、天神地区では天神地下街が誕生したりしています。そして現在は、博多駅近辺での開発が活発だったり、天神ビッグバンを中心とした天神地区の再開発が始まっています。そういうサイクルで考えていくと、次の20年後、さらにその次の20年後に向かってどのようにしていくか―。今年や来年といった短期的なことであれば、若い人たちのほうがよっぽど実現に向けて取り組む力があるのかもしれませんが、20年先といった長期的なことになると、我々世代の経験や知識、勘などが生かせるのではないかと思います。
――天神ビッグバンといえば、福岡地所さんの「天神ビジネスセンタープロジェクト」が、第1号物件として話題になりましたね。
榎本 今のところ、建替えの際のテナントの移転先などの問題もあって、うちの「天神ビジネスセンタープロジェクト」以外の大規模な動きはまだあまりないようです。これが、皆が一気に再開発を進めていけるような状況になれば、また街並みがガラッと変わっていくことでしょう。せっかくの再開発ですし、ぜひ街並みを変えていきたいですね。そして福岡の街全体が、もっと魅力的かつ国内外から人を呼び込むことのできるような都市になっていってほしいと思います。
(了)
【文・構成:坂田 憲治】<COMPANY INFORMATION>
代 表:清原 邦彦
所在地:福岡市博多区住吉1-2-82
設 立:1978年3月
資本金:9,950万円
売上高:(17/5)約129億7,400万円<プロフィール>
榎本 重孝(えのもと・しげたか)
1946年生まれ。77年、28歳のときにブラジルに渡り、都市開発に携わる。14年間のブラジル生活を経て帰国。現在は(株)エフ・ジェイ ホテルズ取締役会長のほか、福岡地所(株)取締役副会長など、多くの役職を兼務。福岡の地域経済活性化のために尽力している。法人名
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