2024年11月24日( 日 )

北九州メーカー、発展のカギを世界市場に求める~TOTO、YASKAWA(前)

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 企業は国内の需要に対応するだけでは成長が望めなくなってきている。では企業はやせ細っていくしかないのか。北九州を代表するメーカー2社は今、世界に成長のカギを求めている。

TOTO

 北九州市小倉北区に本社を構えるTOTO。言わずと知れたバス・トイレのトップメーカーだ。国内シェアは6割を占め、競合する旧INAXとはダブルスコアをつけるほど日本国内では高い支持を集めている。
 同社は2017年に設立100周年を迎えた。急速に西洋化していった明治期から昭和期にかけて、時流に乗り日本人に西洋式の衛生陶器を提供していき、国内トップシェアを不動のものとしている。そのTOTOが成長のカギとしているのが、海外市場である。TOTOが2017年に発表した中期経営計画では、2022年度は国内売上高4,500億円(17年度予想4,330億円)で17年度比+4%であるのに対し、海外売上高は2,200億円(17年度予想1,375億円)と、60%の増加を狙うとした。
 実は、日本国内での住設事業の売上高は13年の4,339億円から足踏みを続けており、17年(計画)は4,330億円にとどまっている。もちろん工夫を重ねており、リモデルによる収益の増加を狙ってはいるが、現段階以上の急速な成長は望めないと見ているのだ。

 そこでTOTOが目指したのは海外市場だ。TOTOは世界でも五指に入る衛生陶器メーカーだが、売上の主体は国内需要によるもの。全売上高6,000億円に対し、国内住設事業の占める割合は72%(4,330億円)、海外住設事業は22%(1,375億円)と、圧倒的に内需型の売上構成なのである。そこで目を向けたのが海外市場だ。

 とはいえ、海外にも衛生陶器を扱う企業はすでにあるし、市場もすでに醸成されている。そこにどうやって切り込んでいくか。TOTOは世界的にも稀有な機能商品であるウォシュレットや日本で高度に(あるいはガラパゴス的に)進化した機能性・デザイン性を軸に啓蒙していくことで、ブランドイメージの定着を狙う。柱となるのは中国市場だ。17年度は中国市場での売上高715億円を見越しているが、これを25年度には1,060億円にまで伸ばしたいとしている。売上構成は衛生陶器320億円、ウォシュレット380億円、水栓金具260億円、その他100億円という計画だ。すでにあるトイレにウォシュレットを後付けしていきたい考えで、ウォシュレットを突破口に既存市場へ切り込む戦略をとる。
 中国戦略にどれだけ重みを置いているかは営業拠点の数にも表れている。TOTOが有する海外子会社27社のうち、10社が中国(香港含む)となっている。ただし、ウォシュレットを起爆剤にして計画が遂行できるかどうかには不安要素もある。17年度の計画では、中国地区でのウォシュレットの売上高は195億円となっている。それを5カ年で380億円、つまり倍増させる計画なのである。ウォシュレットが生まれたのは1980年。他メーカーまで含めると国内では知らない人がいないほどの普及をはたしているが、海外では、まだまだ認知が進んでいない。そもそも、ウォシュレットを知らない中国人の方が普通なのである。そこを5年で倍増させることができるか。TOTOブランドとウォシュレットの浸透。この2点が、TOTOが中国市場に切り込めるかどうかの分水嶺となるだろう。

 また、海外市場では新興国・インド、ブラジルへの進出も考えられている。かつて、TOTOが東洋陶器という社名だったころ、生活の急速な変化を追い風に発展してきた歴史がある。日本ではすでに西洋式の衛生陶器が普及しきっている状態だが、海外にはまだ「これから」の市場が残っているのである。TOTOが日本を席巻した歴史を新興国で再現したい。その考え方は実にTOTOらしいものだ。その先にあるニーズをTOTOが自社のものとする。開拓者精神を発揮できる市場で存在感を見せつけることができるかどうかも、TOTOが限界突破できるか否かに大きく影響を与えることになる。

(つづく)
【柳 茂嘉】

 
(後)

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