スマートヘルスケア市場の現状と課題(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
スマートヘルスケアに明確な定義はまだ存在せず、かなり広い範囲を含んでいることが多い。そのなかで一番身近な分野は、ウェアラブル機器を使って行われる分野であろう。この分野の大きな成長可能性を見込んで多くの企業が参入し、今後市場の拡大が予想される。
スマートヘルスケア市場の各国の動向はというと、米国政府がスマートヘルスケアに世界で一番積極的である。それによって、ヘルスケアへの投資も増加している。昨年の米国のヘルスケア市場への投資は全体投資の18%を占めているほどである。一方、中国は世界最大のヘルスケア市場で、2020年に市場規模は100兆ドルに達すると言われている。
日本も2001年にヘルスケアの情報化をはじめ、医療標準化、情報インフラの構築に取り組んだ。規制も緩和し、技術開発が商業化できるように支援してきた。その結果、日本の企業は診断とセンサー分野で世界的な技術を保有している。それに比べ、韓国は各種の規制でスマートヘルスケア産業が成長していない。韓国では遠隔医療サービスはまだだし、医療情報は医療機関の内部サーバーに保存するようになっていて、クラウドサービスが利用できない状況である。それに、医療機器に対する定義も不明確で、開発した医療機器にリスクがないにも関わらず、不必要な高いハードルを越えないといけない場合が多々ある。
これほど有望な産業であるヘルスケア産業であるが、課題はないだろうか。現在のウェアラブル機器の効果は限定的である。いくつかの測定は可能であるが、それが信頼できる診断にはまだなっていない。もちろん健康状態を知ること自体は有益であるが、消費者はそれに満足していないのが現状である。それに、健康意識の高い人がいる反面、普通の人は測定を面倒だと思いがちである。
さらに、医療界はとても保守的で、積極的にヘルスケア産業が成長するのを喜ばないというのもヘルスケア産業が成長する妨げになっているのではなかろうか。ヘルスケア産業はIT業界と医療機器業界が力を合わせてはじめて成立するが、その歩調も旨く揃っていない。
そのような中で、聴診器の診断機能をデジタル化し、家で簡単に診断ができるだけでなく、データなどを見えるようにし、簡単に異常がチェックできるようにした企業があり話題を呼んでいる。(株)スマートサウンドという会社である。病院に行くとはじめに医者は聴診器を使って診断をするが、最近は聴診器をうまく使えない医者もいるようだ。この製品は今までのように医者個人の腕に頼るのではなく、アルゴリズムを開発して、聴診器をあてるだけで、簡単な診断ができるようにした製品である。不整脈など何か事前に異常が探知できれば、大事に到らずに済むケースも多い。また妊婦、高齢者、赤ちゃん向けの商品なども色々あって、今後ビッグデータ分析も予定しているとのことだ。
医者が不足している保健所などにもこのようなヘルスケア機器があれば、医者の代わりにしっかりした対応が可能になるだろう。
(了)
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