福岡市が違法工事 私有地に勝手に構造物
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福岡市が、土地の所有者に何の断りもなく、コンクリート構造物を建築する違法工事を行っていたことがわかった。不動産侵奪罪に問われる可能性がある。
問題の現場は、講堂および体育館の改築が進められている平尾小学校の南側。昨年8月から11月末にかけて、小学校敷地に隣接する民家を支えるための擁壁が造られた。周辺の地盤がゆるく、一連の工事によって家屋の傾斜や壁にひびが入るなどといった影響が出たため、小学校改築工事の計画を変更して同工事の一環で行われた。
隣接地の地権者は、境界を越えることについては「一切承知していない」と明言している。不動産に対する財産権を侵害する行為は、不動産侵奪罪(刑法235条の2)に問われる。ただし、その一方で、所有権の取得時効(民放第162条)の規定があり、十年間、この状況が続けば、擁壁がはみ出している分の土地の所有権が市のものになるおそれがある。前出の通り、擁壁は民家を支えるためのものであり、長期的な使用が考えられるため、地権者にとっては深刻な状況といえる。
この擁壁の工事を所管する教育委員会教育環境部施設課によると、擁壁が越境し、私有地を侵害している状況を把握しており、「(地権者には)事前に図面で説明し、同意を得られたものと認識していた」(同課課長)という。しかし、地権者の同意書などは「失念していた」(同)とし、また、担当職員に所有権の取得時効の認識が足りなかったとして「教育も含めて再発防止策を検討したい」(同)という。現場職員の認識不足で起きた確認ミスといいたいところだろうが、その越境には法的根拠が一切なく、現在も違法状態であることは明白だ。
地権者は、越境について市側の説明はなかったと強く主張する。実は、この壁の建築工事に入る前、地権者の希望もあり、境界確定が行われ、境界標が打たれていた。そのため、画像の通り、壁の越境は誰が見ても明らかになっている。境界を強く意識していた地権者に対して、壁の越境に関する説明が不足していたということがあり得るだろうか。
さらに、福岡市への情報開示請求で公開された擁壁の設計図には、「地元へ確認・了承をいただき、官民境界を越境し構造物を設置することとする」と注意書きがある。つまり、越境を前提に壁が設計されていたということだ。ところが、この注意書きのある設計図を地権者は「見たことがない」と話している。
【山下 康太】
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