虻蜂取らずの非戦略的外交では朝鮮半島情勢の激変を乗り切れない(1)
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自民党 元副総裁 山崎 拓 氏
世界中の注目が集まる米朝首脳会談。シンガポールで開かれるアメリカ・トランプ大統領と北朝鮮の最高指導者・金正恩氏の対話が、日本を含む東アジアの国際情勢に、大きな変化を与える可能性は高い。今回、データ・マックスでは、長年、政治家として朝鮮半島に向き合ってきた自民党・山崎拓元副総裁を取材。朝鮮半島情勢の今後の展望や日本の外交姿勢のあり方について見解を求めた。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)
まずは「非核化」
――今年4月27日に板門店で開かれた南北首脳会談は、朝鮮半島にとって大きな転機になったと思います。韓国側は、首脳会談をやれると思って動いていたと思いますか。
山崎氏(以下、山崎) 文在寅大統領は、悲願である南北統一を目指し、まず、戦争を終えようと考えています。その前提条件が朝鮮半島の非核化です。
――「南北統一」とは、連合政権のようなかたちになるのでしょうか。
自民党 元副総裁 山崎 拓 氏
山崎 そのかたちは何も決まっていません。まず、38度線を解消するということ。まだ休戦状態ですから。しかも、韓国は休戦協定に入っていません。協定に入っているのは、国連軍を代表するアメリカと、北朝鮮および中国です。その時に韓国は参加していません。
もともと朝鮮半島は1つの国でした。同じ言葉・同じ民族という想いが、両方の民衆にあります。平昌五輪で合同チームをつくったように、朝鮮民族は1つであるという意識があり、それを主張する文在寅氏はいま、支持率が8割あります。彼らがもつ感覚は日本人にはわからないでしょう。日本は1965年に日韓基本条約を結び、韓国とだけ国交を正常化しましたが、その時の日本の尺度には、自由主義と共産主義のイデオロギーしかなかったのです。
――今後もうまく運んでいくと思いますか。
山崎 核問題が解決しなければ難しいと思います。キーワードとなる『朝鮮半島の非核化』を実現するには、北朝鮮が求めている現体制の保証をどうするかにかかっています。
――東西ドイツのようにはいかなさそうですね。
山崎 あれはゴルバチョフが、ペレストロイカをやって、東ドイツだけでなくソ連邦全体が瓦解したからできたことです。北朝鮮のバックは中国とロシアだったのですが、流石に金正恩も反省したのか、中国とアメリカ、両方と対立していては身がもたないと思ったのでしょう。
――安倍総理としては、今後の見通しを立てておかないといけませんね。
山崎 韓国としては、北朝鮮の軍事的脅威を除去することが当面の狙いです。ゆくゆくは連邦国家みたいなものを考えているとしても、文在寅は、あと4年しか大統領をやれません。また、大統領秘書室長の任鍾晳(イム・ジョンソク)氏が後継者の最有力だと思いますが、文在寅氏は憲法を改正し、次の大統領から任期を延ばそうとしましたができていません。
――選挙に勝って統一を進めるという話になりますか。
山崎 いまのところ、統一国家という具体論がありません。体制が違い過ぎて無理だからです。もちろん、『金王朝』のなかに韓国が入るという考えはありません。そんなことを言い出したら、いっぺんに選挙で負けますよ。民主主義国家ですから。
――中国は、朝鮮半島を平穏にして、口を出せるところの権益をもっておきたい。アメリカは、自国に脅威を与えるミサイルの開発を阻止する。アメリカ一辺倒の朝鮮半島政策をとる日本に出番はあるのでしょうか。
山崎 出番はもちろんあります。問題解決のための“財布”の役割です。朝鮮半島の非核化の恩恵を受ける最大の国は日本です。そして日本は、植民地時代の賠償を北朝鮮にはしていません。不用意に、日朝平壌宣言(2002年9月)を踏襲すると安倍総理は何回も発言していますが、植民地支配の過去の清算は、平壌宣言に書いてあります。安倍総理は、拉致問題を最優先にするとしょっちゅう言いますが、同時に、平壌宣言に基づいて対話するということも発言しているわけです。
(つづく)
【文・構成:山下 康太】関連記事
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