虻蜂取らずの非戦略的外交では朝鮮半島情勢の激変を乗り切れない(2)
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自民党 元副総裁 山崎 拓 氏
虻蜂取らず
――安倍総理は、従軍慰安婦像の問題で韓国とトラブルを起こす一方で、北朝鮮に拉致被害者のことを伝えてくれと韓国に頼み、アメリカにも頼みました。そして、南北会談からの流れでは、「蚊帳の外」という風に報道で指摘されています。一連の安倍外交は正しかったと思いますか。
自民党 元副総裁 山崎 拓 氏
山崎 間違いとはいえないが、戦略的ではないことは事実です。何を目指しているのか、はっきりしない。日ロ外交では、非常に熱心に何度もプーチン大統領と会談し、かなり前進があったと宣伝していますが、北方領土は、返還どころか、ロシアの軍事基地が強化されました。
その理由は日米安保体制です。安倍総理は、「日米安保体制の強化」を強調し、日本の施政権のおよぶところには米軍が出動するし、場合によっては米軍基地ができる可能性が講じられました。つまり、北方領土が返還されれば、日本の施政権下に入り、安保の対象になって米軍が出動するようになります。必要であれば軍事拠点を設けることもあり得る。ロシアは、それが一番困るわけです。冷戦構造は解消したといわれているが解消していない。
ヨーロッパではたしかに解消しましたが、日本は何1つ変わっていません。38度線もあるし、北方領土も還ってきていない。そのようななか、安倍総理の外交は、北方領土、核ミサイル、拉致、貿易、何を一番重要に考えるかというところで何もかもうまくやろうとして結果、“虻蜂取らず”になっています。
トランプ大統領が誕生したら、いち早くべったりしたが、ウクライナやクリミア半島の問題については、NATOに同調して経済制裁を続けている。プーチンはそれを非難しています。プーチンと安倍総理は、「ウラジミール」「シンゾウ」と呼び合いながら、「特別な関係」だと喧伝したが、一方では、アメリカの尻馬に乗って、「対北朝鮮へ最大限の圧力」というし、ウクライナ問題におけるロシア制裁にも加担しています。そういうことを理由に、プーチンは北方領土問題を進展させていないのです。
すべての面で日本の外交は戦略的ではありません。この時期に、「最大限の圧力」なんて言わなくてもいいことをまた繰り返して言っている。だから、北朝鮮の核実験場の視察に日本の記者は入れないという話になるわけです。
――完全に「蚊帳の外」ですね。“財布”でなくなれば、日本には見向きもしないでしょう。
山崎 北朝鮮に中距離ミサイルが残る可能性もあります。ノドンやテポドンといった中距離ミサイルの対象は日本だけですから。韓国に対しては短距離ミサイルで十分です。
――ここまで日本が孤立してくると難しいかもしれませんが、山崎先生ならどのような外交戦略を描きますか。
山崎 安倍外交は経産省主導なので経済協力中心です。これを「外交の安倍」だと宣伝してきたので、それが功を奏しているとみんな(自民党の国会議員)が信じています。もう、総理を代えるしかないでしょう。
(つづく)
【文・構成:山下 康太】関連記事
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