2024年11月29日( 金 )

米朝首脳会談に寄せる期待と今後の展望(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 今まで崖っぷち外交を展開してきた北朝鮮にも、このままでは体制維持ができないという危機感が生じたのは間違いない。それでこの辺りで政策を転換し、今までのイメージを変え、またそれによって経済制裁を解除してもらい、経済を立て直さないと、北朝鮮に明日はないと北朝鮮の首脳部は判断したのだろう。それに、米国の経済制裁だけではなく、強硬派で固められた米国政府は北朝鮮にとって真の脅威でもあった。

 現時点では、米朝首脳会談を開いて先制攻撃できないようなムードをつくることと、平和攻勢で経済制裁を解くのが北朝鮮に一番利益になると判断したのだろう。さらに、今まで中国に頼ってきたが、実はそれほど得るものはなかったという反省もある。いっその事、中国より米国に近づく方が得策かもしれないという判断も働いたのだろう。

 それでは、米国の場合はどうだろうか。米国も北朝鮮に最大の圧力をかけることによって、武力によらずに核問題を解決する必要がある。だとしたら最大限の圧力をかけて対話に誘導するのが最善の策になるだろう。その道は平坦ではないが、その過程で金委員長を口説くことができたら、トランプ大統領は歴史に残る手柄を立てることになる。また、北朝鮮を敵に回さず、経済援助などでこちら側に巻き込むことによって、中国の台頭などに対抗する良い手段にもなる。

 最後に韓国の立場はどうだろうか。何と言っても、北朝鮮の脅威に晒されているのは韓国である。北朝鮮の問題はどんな犠牲を払ってでも解決しなければならない優先課題でもある。それと同時に、韓国の経済もある意味限界に達しつつある。韓国経済の限界を乗り越える良い方法の1つは、南北の関係改善である。北朝鮮の脅威を解決できれば、韓国の経済にとっては、二重にプラスになる。東南アジアよりも人件費が安くて、近くて、言葉の問題もないのが北朝鮮である。インフラが整っていない北朝鮮は韓国の建設会社にとってビジネスチャンスに溢れている。このような利害が一致しているので、米朝首脳会談が成立するのだ。

 最後に米朝首脳会談の展望と懸念についてだが、米朝首脳会談が開催されることになったこと自体が大きな前進で、今後少しずつ成果が期待できるだろうという意見もある。とくに、韓国の文大統領はどんなことがあっても、朝鮮半島に平和を定着させるという意気込みだ。しかし、北朝鮮の専門家であればあるほど、今回の首脳会談は政治ショーにすぎず、事実的な成果は期待できないとしている。

 北朝鮮は会談に応じながら、経済援助などの要求はしてくるものの、非核化には時間を延ばし、結果的にはなかなか実行されないという意見だ。何よりも、トランプ大統領の個人的な名誉のために、原則を守らず妥協することも警戒されている。金委員長がどのような選択をするかは、蓋を開けてみないと誰もわからない。北朝鮮の体制保証などと引き換えに、非核化が実現されるのか、今回の米朝首脳会談の行方に注目が集まっている。

(了)

 
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