進化を続ける世界有数の観光地・京都 観光客を呼ぶ切り札は名所ではなく「人」(1)
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訪日外国人が2,000万人を越え、いよいよ日本全体で「観光立国」としてのあり方を本格的に考えなければいけない時代がやってきた。福岡にもクルーズ船や航空機を利用した外国人観光客が多く訪れ、中心市街地ではキャリーバッグを引いた外国人観光客を見かけない日はないが、その一方で、観光をビジネスとしてどう生かすかについては試行錯誤が続いている。そこで、国内では最高峰の観光都市である京都市が直面する課題と今後の取り組みについて、現地視察とインタビューを通じて考える。
90年の積み重ねが実る、観光都市・京都
京都は日本では随一の歴史をもつ観光都市である。京都市が京都駅に観光案内所を設置したのは1927年。市役所に観光課が設けられたのは1930年のことだった。もちろんそれ以前、観光ではなく「物見遊山」という言葉で表現されていた時代から、京都は多くの観光客を受け入れ続けてきた。ご存知「東海道中膝栗毛」でも、京都に着いた弥次さん喜多さんの一行は全8編のうち2編を京都見物に費やしている。
京都市の年間観光客数は、2000年にスタートした「観光客5,000万人構想」を受けて2008年に5,000万人を突破。以降1年を除いて5,000万人台をキープしている。16年には5,522万人の観光客が京都を訪れた(『京都観光総合調査(2016年版)』による。以下、京都の統計データについては特記がない限りこの調査による)。福岡への入込観光客数も近年急増しており、16年は2,050万人と初めて2,000万人を超えた(『福岡市の観光・MICE2018年度版』による。以下福岡についての統計データは特記のない限りこの統計による)。
京都を訪れる動機となったのは、80%以上が「寺院・神社、名所・旧跡」。これは日本人でも、外国人でも変わらない。太平洋戦争の戦火をまぬがれた京都には、平安時代以来の伝統をもつ寺社が今も軒を連ねている。実際に京都の町を歩いてみると、「この筋を曲がると国宝」「あの角の向こうは世界遺産」と、観光資源は無限にあるように思える。これなら、黙っていてもいくらでも観光客は来るだろう。
「観光において、京都に「課題」といえるようなものがあるのだろうか」。こんな疑問を胸に、お話をうかがったのが(公社)京都市観光協会企画推進部DMO企画主幹・堀江卓矢氏。京都市観光協会はこれまで国内の観光を中心に扱ってきたが、4月1日付でこれまで京都文化交流コンベンションビューローが担当してきたインバウンドプロモーション事業を同協会に移管し、DMO(Destination Management Organization:地域と共同して観光地域づくりを行う法人。観光地経営の舵取りを行う)として本格的な活動を開始した。
京都最大の課題は交通問題
観光シーズンの京都を訪れると、まず驚くのが京都駅を行き交う観光客の数。京都駅には東海道・山陽新幹線、JR京都線ほか在来線、近鉄京都線が乗り入れ、京都市営地下鉄烏丸線も地下で接続している。1日の乗降客数は、これらの鉄道各線を合計すると60万人を超える(各鉄道会社の発表を合算)。京都には空港や港湾がないため、多くの観光客が京都駅を「京都の玄関」として利用している(関西方面からは阪急、京阪など京都駅を経由しない鉄道ルートもある)。
さらに驚かされるのが、京都駅中央口を出たところにある路線バス乗り場。観光シーズンは、1つの乗り場に100人単位の行列がとぐろを巻き、1台のバスではとても乗り切れない場合もある。市内の幹線道路では次から次へとやってくるバスが停留所前で数珠つなぎになっている様子も見られる。
この混雑は、京都にとって大きな課題であることは間違いない。海外の観光地では、観光客の受け入れ過多で観光資源がダメージを受ける「オーバーツーリズム」が問題になっている。
(つづく)
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