2024年12月22日( 日 )

進化を続ける世界有数の観光地・京都 観光客を呼ぶ切り札は名所ではなく「人」(2)

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 訪日外国人が2,000万人を越え、いよいよ日本全体で「観光立国」としてのあり方を本格的に考えなければいけない時代がやってきた。福岡にもクルーズ船や航空機を利用した外国人観光客が多く訪れ、中心市街地ではキャリーバッグを引いた外国人観光客を見かけない日はないが、その一方で、観光をビジネスとしてどう生かすかについては試行錯誤が続いている。そこで、国内では最高峰の観光都市である京都市が直面する課題と今後の取り組みについて、現地視察とインタビューを通じて考える。

 堀江主幹(以下、堀江) 京都にとって最大の課題は、交通の混雑です。京都市内を移動するための主な交通機関はバスと地下鉄ですが、とくにバスの混雑が課題になっています。いかに需要を減らし、平準化していくかがキーポイントです。

 ――京都を訪れる際の交通手段は、やはり鉄道でしょうか。

 堀江 統計を見ると、74.6%が鉄道、16.1%がバス、車が9.3%です。近くまで車できた場合でも、パークアンドライドで公共交通機関を使ってもらう場合がほとんどですね。

 ――現在、京都で観光客が利用する交通手段というと、統計によるとバス(56.0%)、地下鉄(42.7%)、タクシー(19.3%)ということになります(複数回答のため合計は100%を超える)。たしかに、京都市が行っている観光客満足度調査では、満足度が低い項目として「交通状況(トイレの渋滞など)」「トイレ」「公共交通機関」が挙げられています。実際、私も今回市バスで市内を移動しましたが、土日はともかく平日も、多くの観光客と地元の皆さまでごったがえしていました。

京都駅に設置されたforeign friendly taxi乗り場

 堀江 バスのお客さんを、できるだけ地下鉄に誘導する施策をとっています。たとえば、「市バス・京都バス1日乗車券カード」を100円値上げした一方(500円→600円)、地下鉄とバスを両方利用できる「京都観光1日(2日)乗車券」を大きく値下げしました(1,200円→900円)。実際に観光案内所で販売しているチケットの傾向でいうと、価格改定前まではバス1日乗車券が9割だったのですが、この割合が下がり、地下鉄・バスの併用チケットの割合が予想を超えて増加しています。用意していた磁気カードが在庫切れとなってしまい、京都市交通局は対応に追われているとのことです。また、伝統的に京都のバスは後乗り・後払い方式だったのを、前乗り・先払い方式に変更する実証実験をしています。従来の後乗り・後払い方式では、降車の際に支払いで手間取ってしまうケースが多いですから、ソフト面の改善で少しでもスムーズなバス利用ができるように努めています。繁忙期には臨時便を運航しています。

 ――パッと鉄道でも引ければいいんでしょうけどね。

 堀江 なかなか、そうもいきませんからね(笑)。地下鉄の路線延長にしても、京都はとにかく地面を掘れば何か遺跡が出てくる土地柄ですから。

 ――観光客向けというと、タクシー利用も重要です。

 堀江 タクシーは4月から初乗り料金が下がりましたから、近距離でも利用しやすくなります。混雑を避けるならタクシーを、ということですね。また、観光庁の補助を受けて、外国人観光客向けに「Foreign friendly taxi」という事業をスタートしており、現在市内に100台ほど走っています。このタクシーに乗務している運転手さんは必ずしも全員英語が堪能というわけではありませんが、「外国人観光客がどのような場面で困難を感じるか」などについての研修を受けています。全車クレジットカード決済に対応し、利用しやすいように配慮しています。京都駅に専用の乗り場を設置してありますよ。

 そして、京都市としては「なるべく歩いて観光してほしい」という考えから、「歩くまち京都推進室」という部署を設けて、徒歩での観光を推奨しています。徒歩観光を推進する立場から、四条通(川端通~烏丸通間約1.12km)の歩道拡幅やバス停の集約、タクシー乗り場の設置などを行い、歩行者が歩きやすい通りを実現しました。これにより、1日あたりの歩行者や沿線の駅利用者数が2,000人以上増えるなど、徒歩を選択する人が増えるという結果が出ています。もともと京都は路面店が多いですし、徒歩で楽しめるまちづくりを進めています。

 ――福岡では、市内を走る西鉄バスが運転者の不足を理由に減便するという事態になっています。京都でも、人手不足を感じるところはあるのでしょうか。

 堀江 ホテルのボーイさんや旅館の仲居さんなど、接客業は慢性的な人手不足といわれています。賃金相場も上がってきていますから、人材の奪い合いになりつつあるようです。とはいえ、一般的に接客業は付加価値が高くないというイメージをもたれやすいので、多くの大学が集まり将来の働き手が多く住む街であるにもかかわらず、「もっと面白い仕事がしたい」と東京に出ていってしまうケースは多いのではないかと思います。

(つづく)
【深水 央】

 

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