進化を続ける世界有数の観光地・京都 観光客を呼ぶ切り札は名所ではなく「人」(3)
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訪日外国人が2,000万人を越え、いよいよ日本全体で「観光立国」としてのあり方を本格的に考えなければいけない時代がやってきた。福岡にもクルーズ船や航空機を利用した外国人観光客が多く訪れ、中心市街地ではキャリーバッグを引いた外国人観光客を見かけない日はないが、その一方で、観光をビジネスとしてどう生かすかについては試行錯誤が続いている。そこで、国内では最高峰の観光都市である京都市が直面する課題と今後の取り組みについて、現地視察とインタビューを通じて考える。
京都の観光が目指すのは「量から質」への転換
観光客の「質」を測る1つの目安として、観光消費額がある。たくさんお金を落としてくれるお客さんは良いお客さんだ、ということだ。統計によれば、京都の観光消費額は16年に初めて1兆円を超え、1兆862億円となった。内訳をみると、市内交通費1,105億円、宿泊代2,114億円、買物代3,620億円、飲食費2,925億円、入場料・拝観料676億円などとなっている。
観光客1人あたりの観光消費額は、日帰り客で1万58円。宿泊客は4万7,588円(2016年の統計)と、大きな開きがある。両者の内訳をみると、宿泊代を除いても買物代、飲食費、観光施設への入館料・拝観料などすべての項目で宿泊客は日帰り客よりも消費額が大きい。観光客にどうやって宿泊してもらうかは、観光地にとって永遠の課題だ。
福岡は陸・海・空のルートがそろった「九州の玄関口」だが、それだけに宿泊せずに通過してしまう観光客は多い。最近はクルーズ船で日帰りするインバウンド客も増え、この消費をどれだけ地元で吸収できるかは1つの課題になっている。16年の観光消費額は4,534億円(前年比14.9%増)と大きく伸び、さらなる伸びしろに期待がかかる。
堀江 現在、目標にしているのは、宿泊客数を増やすこと、観光客1人あたりの消費額を高めることです。宿泊するかしないかで、消費額は大きく変わってきます。
現在京都市では「上質宿泊施設誘致制度」を行っています。これはラグジュアリータイプ、MICEに活用できるタイプ、地域資源を活用したタイプという3つのタイプの「上質宿泊施設」を誘致する制度です。これもやはり、観光消費額が高い客層の宿泊を誘引することで、海外の富裕層に旅行先や宿泊地としての認知を高めてもらうことを目的の1つにしています。ラグジュアリータイプでいえば、以前からあるハイアットリージェンシー京都に加え、最近では16年にフォーシーズンズホテル京都がオープンしました。価格帯のレンジを上げていくために必要な取り組みですね。
――民泊や簡易宿泊所など、安い価格帯のものは働きかけなくても増えていきますが、ラグジュアリーなホテルはしっかり誘致する必要がありますね。
堀江 近年の観光客急増にともない、中価格帯の似たような宿泊施設が急に増える傾向があります。最近では、ゲストハウスとホテルの中間に相当する、電子レンジや簡易キッチンを備えた滞在型ホテルが随分増えました。簡易宿所の登録件数もこの5年で5倍に増えています。似たような施設が増えると、市場リスクへの対応や、観光客のライフステージの変化に応じた提案が難しくなってしまいます。宿泊客の選択肢を増やすための施策は必要だと考えています。
――福岡市はG20の誘致に失敗しました。断られた理由の1つが、各国の首脳クラスをもてなせるラグジュアリーなホテルが足りない、というものです。
堀江 京都もMICE(企業研修や国際会議などの略称)には力を入れており、国立京都国際会館は大規模なMICE施設として最大7,000人規模の大型会議にも対応しています。しかし、横浜市のみなとみらい地区や新横浜近辺で開催されるような、大規模な国際会議を受け入れられるキャパシティのあるホテルはなかなかありません。規模が小さくても勝負していけるようなホテルをつくっていくという考え方になります。
――京都市の中心部には、大規模な開発が可能な土地はもうないのではないでしょうか。
堀江 そうですね、もうその余地は少ないと思います。京都駅近辺にいくつかある空き地も、すでにホテル建設が決まっています。市内の不動産市場はすでに売り局面に入ったという観測もありますね。
(つづく)
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