2024年12月23日( 月 )

進化を続ける世界有数の観光地・京都 観光客を呼ぶ切り札は名所ではなく「人」(4)

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 訪日外国人が2,000万人を越え、いよいよ日本全体で「観光立国」としてのあり方を本格的に考えなければいけない時代がやってきた。福岡にもクルーズ船や航空機を利用した外国人観光客が多く訪れ、中心市街地ではキャリーバッグを引いた外国人観光客を見かけない日はないが、その一方で、観光をビジネスとしてどう生かすかについては試行錯誤が続いている。そこで、国内では最高峰の観光都市である京都市が直面する課題と今後の取り組みについて、現地視察とインタビューを通じて考える。

インバウンドをどうつかむか

 福岡では近年、外国人観光客の存在が大きくクローズアップされている。17年の外国人入国者数は298万3,000人となり、5年間で3.7倍。外国人延べ宿泊者数(推計)は271万人泊となり、前年を61万人泊上回った。

 京都は、言わずと知れた外国人観光客のメッカである。外国人宿泊者数は16年に318万人となり、歴代最高。日帰り観光客も343万人となっている(京都の外国人宿泊者数は実数)。京都市内各地の観光名所を訪れると、交わされる会話を聞いただけでも中国語、ハングル、英語、フランス語、スペイン語などが耳に入る。また近年は、ヒジャブ(イスラム教徒の女性が身に着ける、頭髪を覆うスカーフ)を纏う外国人観光客も多い。

 祇園や河原町界隈では、レンタル和服を着て街を歩く外国人観光客の姿を数多く目にすることができる。外国人観光客は、観光都市・京都の欠かせない要素となっている。

 ――パンフレットや観光案内所の多言語化がずいぶん進んでいると感じました。パンフレットは4カ国語(英語・簡体字中国語・繁体字中国語・ハングル)に対応しているものも多いですね。また、1人で回れるバス旅行の提案など、FIT(個人旅行者)向けの施策も目にとどまります。

和装を身にまとう外国人の姿は京の風物詩だ

 堀江 FITが増え、団体客が減っているのは実感としてあります。統計では、アジア圏よりも北米、欧州、オセアニアの観光客はFITの割合が多いように見えますね(「同行者数」は、アジア圏の観光客は「3~4人」の割合が20%を超えるのに対し、北米は8.9%、オセアニアと欧州は11%台。北米・欧州・オセアニアは「1人」「2人」を合算すると70%を超える)。

 ――外国人観光客向けには、どのような施策を行っているのでしょうか。

 堀江 力を入れている施策としては、従来京都市が特区制度を活用して進めてきた認定通訳ガイド制度があります。一定以上の語学力がある人に、京都の文化財や伝統産業などについて学んでもらい、京都の魅力を伝えてもらう有償のガイドです。18年1月に「通訳案内士法と旅行業法の一部を改正する法律」が施行され、「地域通訳案内士」として一本化されることになりました。京都市としては従来通り、京都の魅力を伝えられるガイドを育成していきます。

 ――市内では、日本人ガイドと同行している観光客を何度も見かけました。ガイドさんは、ボランティアが多いのでしょうか。

 堀江 観光協会で事業として行っているものは、すべて有償です。

 ――なるほど。ボランティアに頼るかたちになると、質が保証できなくなりますね。

 堀江 サービス行為が発生しているのであれば、きちんとマーケットに乗せるようにしないと、本来評価されるべきサービスが評価されなくなってしまい、地域の外にお金が逃げていくきっかけにつながります。京都市内には、ガイドを派遣する会社が何社もあります。ある程度観光マーケットが大きくないと、ガイド事業の地域産業化はなかなか難しいとは思いますが・・・。

観光資源の開拓とコト消費

 寺社仏閣、名所旧跡、美術品から古文書、そして自然の景観に至るまで、京都は「観光資源」と呼べるものにあふれている。一例として、京都市は国宝211件・重要文化財1,865件・特別名勝12件・名勝38件が存在している。国宝と重文だけでも、すべてを見ようと思えばどれだけの時間がかかるか、想像もできない。

 にもかかわらず、京都は新たな観光資源の開拓に余念がない。もちろん民間が手がけた新商品や新業態もあるが、観光協会などが主導して新たな観光資源をつくるケースも多い。また、「コト消費」「体験型消費」といわれる、体験自体を目的とした消費行動も、新しい観光資源のあり方として注目されている。

 ――京都がさらに新しい観光資源の開拓を続ける理由とはなんでしょうか。

 堀江 最近だと、琵琶湖と京都の間を水路で結び、用水から水運、発電までを担った「琵琶湖疎水」の観光資源化を行いました。約60年ぶりに疎水通船を復活させ、滋賀県の大津から蹴上までの運航を始めています。

(つづく)
【深水 央】

 

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