2024年12月23日( 月 )

非日常空間の演出にある商業施設のカギを握るエクスペリエンス(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)花形商売研究所 代表取締役 濱田 浩昭 氏

 ショッピングセンター(SC)がネットショップの台頭によって苦境に立たされている。人が出向かなければならないという「買い物」の前提が崩れされた。商業施設はこのまま衰退してしまうのか、それとも新しい発展の道を進むのか、商業施設のプロデュースやプロモーションなどを手がけ、全国の小売事情にも詳しい(株)花形商売研究所・濱田浩昭代表取締役に近年のSCの事情、いま注目の施設などについて解説していただいた。

一度は消えかけた体験型演出に再注目

 (株)花形商売研究所 濱田 浩昭 代表取締役

 ネットショッピングの台頭によって、世界中でリアルの商業施設が苦境に立たされている。日本も例外ではない。とりわけ百貨店の状況は惨憺たるものだ。バブル期に比べて売上は半分以下に落ち込み、地方の郊外店を中心に閉鎖が相次いでいる。それでも、新進の施設の開業がたびたび話題になっているし、人気のある施設はいまでもそれなりに集客できているが、客はいても見て回るだけでお金は落とさないということも多い。生き残るためにはSC自身が大きく変わらなければならない。その方向性はもう決まっている。いわゆる、モノ消費からコト消費への転換だ。とりわけ、ここ数年重視されているのが、リアルな空間である商業施設ならではの、この場にこないと味わえない体験をいかに演出するかだ。「エクスペリエンス」(体験)が業界の合言葉になるほど、日々そのことに施設担当者は知恵を絞っている。

 SCは昔から体験型の演出を行っていた。たとえば、懐かしいところでいうと、特撮ヒーローが登場するヒーローショーに代表される舞台イベントや、百貨店の屋上に必ずと言っていいほど設営されていた小型の遊園地やビアガーデンなどだ。バブル期の頃までお決まりのように存在したこれらの体験型イベントや施設だったが、イベント目当ての人はお金を落としてくれないということで、商業施設から姿を消してしまった時期がある。2000年代の前半ぐらいのことだ。それが、ネットによる浸食をうけたことで、一度は火が消えかけたリアルの体験を提供する演出が改めて見直されている格好だ。

 ただし、昔のようにステージで何かのショーをするだけでなく、商業施設自体に非日常のイベント性をもたせるような取り組みが必要とされている。具体的に、どのようなイベントや演出をすべきか、さまざまな試行錯誤が行われ、ここ5年ぐらいで、いまどきの商業施設ならではの“エクスペリエンス”とはどういうものか、という定義が形成されたといえるだろう。

 たとえば、施設の設計そのものが趣向の凝らされた体験型の空間になっていたり、イベントについても、自然素材を使った昔ながらの玩具づくりやゲームなどが体験できる「遊びの学校」など、エディケーショナルな演出が凝らされていたりする。また、カード会員システムと連動し、ファミリー向けのイベントを開催するだけでなく人数を限定して招待するなど、限定感をくすぐる取り組みなども行われている。

 実際に、これらのイベント演出をうまく取り入れ、集客に成果を上げている商業施設とはどのようなものだろうか、首都近郊で代表的な施設を沿線ごとにピックアップする。

(つづく)

<プロフィール>
濱田 浩昭

(株)花形商売研究所代表取締役。1960年広島市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。広島の地元紙系列広告代理店、東京のSP/PRエージェンシー勤務を経て1994年、(株)花形商品研究所を大阪で設立。商品・サービスや各種プロジェクトの開発から広告・販促などマーケティング&コミュニケーション活動について、トータルなプランづくりをサポート。提案先は多彩な業種におよぶが、とくに、流通小売業や不動産業といった“商圏”をもつ業種での実績が豊富。2014年秋に拠点を東京に移転するとともに現社名に変更。日本人による海外起業を啓発・支援する(一社)海外起業情報センターを設立し、100名を超える日本人起業家を訪ねて、世界30都市をめぐる取材を敢行した。アジア経営学会所属。

(2)

関連記事