2024年12月24日( 火 )

人々の健康を守るために 創業50年を迎えた臨床検査総合企業(前)

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(株) シー・アール・シー

医療を支える縁の下の力持ち

 医師が患者を診察し、最適な投薬や治療を行う。この一連の流れのなかで、患者の目には直接とまらないものの、欠かすことのできない重要なプロセスが臨床検査である。
 (株)シー・アール・シーは、地場最大手の臨床検査企業。基礎的な生化学検査、投薬中の薬品の血中濃度などを確認する薬物検査、各種ホルモンの分泌量などを調べる内分泌検査、がん検診に付随して行われる腫瘍マーカー検査、さらに免疫血清学検査、細胞性免疫検査、遺伝子関連検査、血液学検査、微生物学検査など、さまざまな臨床検査を行う。さらに有機溶剤や鉛に触れる作業を行う作業者を対象にした産業医学関連検査など、幅広い分野の検査を行うことができる。
 近年ではノロウイルス検査において低コストかつ迅速な検査法を導入。また、がん検診などで使用される細胞診自動スクリーニング装置を導入するなど、常に最新の検査技術へのキャッチアップを怠らない。

▲江川洋代表取締役相談役

 同社の創業は1967年。創業者の江川洋代表取締役相談役が衛生検査技師として身を立て、植田孝雄氏とともに27歳で起業。この年の法改正で、医療機関以外でも臨床検査業務を受託できるようになったことが、この起業を後押しする。検査機器や試薬を「出世払い」という破格の扱いで入手できたのは、2人の人徳だろうか。バイクと自転車で医療機関を回り、注文を取っては夜中まで検査し、翌朝には検査結果を配達。このスピード感が、顧客の獲得に大いに貢献したという。その後69年に法人化した。
 江川洋氏は拡大の一途を続ける同社に、頼りになる助っ人を招集する。2人の弟、次男の奏(すすむ)氏(現・取締役会長)と三男の護(まもる)氏(現・取締役副会長)である。
 ミロク情報サービス(株)で経理を修めた奏氏と、陸上自衛隊で機材の調達・資産管理を学んだ護氏。戦後の混乱期、兄弟で力を合わせなければ生きていけなかった時代をくぐり抜けた3兄弟の絆は強固だ。3兄弟それぞれが自分の強みを生かして経営に参画し、盤石の経営体制で2017年には創業50年を迎えた。
 創業から50年続く会社は珍しいが、同族、しかも兄弟が経営に携わって成功している会社は稀有な存在だ。「銀行からも、『江川さんの会社は兄弟仲がいいからお金を貸すんですよ。そうでないと、いつ会社分裂になるかわからないから貸せない』といわれるくらいですよ」と洋相談役は笑顔を見せる。この結束力こそがシー・アール・シー最大の強みといっていいだろう。

3兄弟が築いたシー・アール・シー

 そして17年10月、同社は新しい世代へのバトンタッチをはたした。江川洋氏の長男で、専務を務めていた江川智広氏が社長に就任したのである。「まだ引き継ぎの真っただ中」(江川洋相談役)という通り、50周年のテーマは「継続」だという。
 「正直、『跡継ぎ』というつもりで入社したつもりはありませんでした。でも周りはそうは見ない。そんな視線のなかで20年過ごしてきました」と笑う智広新社長。それだけに、いよいよ社長就任となっても驚きはなかったという。「臨床検査は、表に出てくるような仕事ではありません。ですから子どものころは興味をもてなかったのですが、いざ会社に入ってみると、『世間の皆さまのために役に立っている仕事です』と胸を張っていえることがよくわかりました。勉強を重ねることで、業務の方向性などについてもいろいろな発想が出てきました。徐々に経営者目線が出てきた、といえるでしょうか」(智広社長)。経験の浅い社員の立場から、長い経験をもつ洋相談役に対して物申したこともあるという。まだわかってない、と厳しく跳ね返されることもあったが、日を追うごとに経営についての深い会話に進展するようになってきた。
 「相談役がどのように考えたうえで方針を打ち出しているのか、自分も経験を積むことで理解できるようになりました。ですから相談役との衝突は減りましたね。数百人の社員を抱え、全員に納得させながら働いてもらうことがいかに難しいことか、身に染みているところです」(智広社長)。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:江川 洋
所在地:福岡市東区松島3-29-18
設 立:1969年7月
資本金:2,000万円
TEL:092-623-2111
URL:http://www.crc-group.co.jp

Profile
江川 洋(えがわ・ひろし)

 1940年7月、中国・大連市生まれ、佐賀県浜玉町育ち。唐津東高校卒。九州大学医学部附属衛生検査技師学校(現・九州大学医学部保健学科)を卒業後、同大学中央検査室勤務を経て、67年にセントラル医学研究所(現・(株)シー・アール・シー)を創業。現在、シー・アール・シーの代表取締役相談役を務める。趣味はゴルフ、観劇、読書。

(後)

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