【大濠花火大会に終了宣言】西日、大濠花火やめるってよ~西日本新聞が発表
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安全な大会運営は限界「街の安全を脅かしている」
長く福岡市民に親しまれてきた夏の風物詩「西日本大濠花火大会」(大濠花火)が今年8月1日に開かれたのを最後に終了することになった。主催者の西日本新聞社が14日付の本紙で発表したもの。西日本新聞は、柴田建哉社長の署名入り「『西日本大濠花火大会』終了のごあいさつ」を一面すべて使って掲載している。
「終了宣言」文によると、大濠花火は1949年に戦没者の鎮魂と戦後復興を目的に始まったという。何度かの中断や休止を経て今年で56回目を迎えていた。
全方位から観覧可能な都市型花火大会は国内でも例がなく、福岡市の人口急増を背景に毎年40万人(主催者発表)を超える人出を集めていた。同社広報部によると近年では2008、09年の48万人が最多で、今年は43万人が大濠公園周辺に集まった。「終了宣言」によると安全な大会運営は限界にきており、雑踏事故の危険性が頻発したほか、今年はNetIB-Newsでも既報のヒマワリ花壇が踏み荒らされるなどの被害も起きていた。
さらに今年の猛暑も大会運営に影響を与えており、「身の危険を覚えるほどの事態に陥ったことも事実です」(終了宣言より抜粋)と、深刻な事態に直面していたことをうかがわせている。
大濠花火終了の原因について「終了宣言」では、(1)収容人員をはるかに超える観覧者が集まること、(2)それによって生じる混乱で観覧者の安全の確保が難しいこと、に加え(3)パトカーや救急・消防の緊急出動の妨げになる恐れがあり「街の安全を脅かしている」と総括している。
不採算事業からの撤退か
夏の風物詩の「終了宣言」は、西日本新聞関係者や福岡市民に驚きをもって受け止められている。同社の中堅記者はデータ・マックスの取材に、「とにかく驚きました。今年の花火は終わったのに、なにをいまさら……と思ったら、完全終了なんですね」と話す。
さらに「社内でもごく一部の関係者しか知らされていなかったのでは」と推察したうえで、「うちは業績悪化の影響で発行エリアを次々に縮小しており、今年3月にはついに南九州から完全撤退しました。事業局関連では2013年に九州一周駅伝を終了しています。大濠花火がなくなったということは、高校生柔道・剣道の祭典、金鷲旗と玉竜旗も聖域ではなくなるかもしれませんね。とにかく縮小傾向なんです」と、苦笑いする。
西日本新聞広報部によると、大濠花火終了に向けた検討や議論がいつから行われて、いつ終了が決定したのかなどは「答えられない」という。例年の予算規模や大会中の事故・負傷者数なども「非公表」と、いつも取材する側の割にはにべもない回答に終始した。唯一明確だったのは、今回の終了が過去にあったような「休止」ではないということで、「再開予定はありません」と明言した。
福岡市民の声はさまざまだ。出版関係の50代男性は「何十年も楽しんできた大濠花火はすでに福岡の文化といっていい。おそらく採算がとれないのでしょうが、新聞社がお金を理由に文化を切り捨ててよいのでしょうか」と憤る。
逆に「終了は当然」と受け止めるのは、20代の女性(IT関係)。「一度だけ花火を見るために大濠公園に行きましたが、想像以上の人出に足がすくみました。人の流れに乗らないと移動もできず、もし将棋倒しでも起きたら大事故になると怖くなりました。花火を見るならテレビで十分で、二度と行こうとは思いません」。
西日本新聞社は発行部数減・減収に歯止めがかからない状況だ。かつて発行部数80万部を誇った「ブロック紙の雄」も現在は64万部に減少。単独売上高は過去10年間で約98億円も落ち込んでいる。2018年に始まった「あなたの特命取材班」シリーズは好評だが、「記事を探しにくい」と社内でも不評の同社HPのリニューアルは進んでおらず、大組織にありがちな決定の遅さが改革をはばんでいるという声もある。
大濠花火の終了は「不採算部門切り捨て」の一環か、市民の安全を重視した苦渋の決断なのか――大濠花火の日、中学生の息子が「女子と夜に会える数少ないチャンス」と浮足立っていたのをお伝えして、本稿を閉じたい。
暑く、長かった夏もそろそろ終わる。
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