【社長インタビュー】台風21号で関空連絡橋に激突した「宝運丸」船主~「閉じ込めの原因になった」と謝罪(後)
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――事故当時の状況は。
清水 公式発表では最大瞬間風速58.1mと言われていますが海上はもっと強く吹いており、宝運丸に設置されていた風速計は60mを振り切っていました。船長は「感覚的には90mほど吹いていた」と話しています。回避行動を起こすためにエンジンをフル稼働させ、風向きと逆方向に向けて発進しようとしましたが、想定を超えた暴風が直撃したため、徐々に流されてしまいました。
一部報道では、「海上保安庁が2度にわたって警告を発していた」とされているようですが、実際は警告や注意ではなく、「走錨回避をするための協力動作的なやり取り」でした。それでも船はみるみる暴風に流されて連絡橋への衝突が避けられないという状況になったため、船長は船員がブリッジにとどまるのは危険と判断し、ぶつかる直前に全員を船の下に退避させました。
――事故発生後の対応は。
清水 事故が発生した9月4日は出張で新潟にいましたが、事故の一報を受けてすぐに東京に向かい、運航会社である鶴見サンマリンさんの緊急対策室で、宝運丸の船長とやり取りをしていました。あの時私が心配していたのは、宝運丸が連絡橋にぶつかった後も暴風が吹き止まず、あのまま橋の下に船が潜り込んで、そのまま圧壊する危険性があったことでした。
事故直後、船長は全員に救命胴衣を着用させ、総員退去の準備をしていました。最初に2人が海上保安部のヘリで救助されましたが、現場周辺ではガス臭があり、爆発の危険性を考慮してヘリはいったん撤退しました。残りの9人はその後、民間業者にお願いして救出しました。船内がブラックアウトして真っ暗闇の中、圧死や海中転落、さらに火災による爆発の不安があったと思いますが、全員よく生還してくれたと思っています。
翌日以降は事故の対応などで関係各所との話し合いや調整をしており、外部と連絡が取れない状況が続きました。事故後に船長と会って話をしたときには、泣きながら謝罪されました。私は、乗組員全員を助けてくれたことに感謝していると伝えました。
――現在の状況と、今後の対応について。
清水 宝運丸は「新来島宇品どっく」に曳航されましたが、損傷が激しく、廃船にする予定です。事故に関しては現在、事故調査委員会が開かれています。会社としても、事故調査には全面協力します。多くは事故調査委員会の調査結果を待ってからの判断になると思います。
――事故をふまえた、再発防止に向けての取り組みなど。
清水 業界として、船の安全を確保するための仕組みをもう一度考えるべきだと思いました。錨泊場所については岸壁から3マイル以上離れることが推奨されていますが、台風の場合はどこにいても危ないことに変わりはなく、今回のような想定を超える暴風の場合はなおさらです。
では法的な拘束力をもって安全な場所を指定するのが良いかというと、場所を指定することで船は指定された場所に集まらざるをえなくなり、今度は船同士が走錨してぶつかる危険性も出てくる。ではどうしたら船が安全な場所を確保できるのか。今回の事故を教訓として、運航スケジュールや台風の状況を踏まえた適切な行動、連携などを提言していければと思っています。
現在、関空連絡橋の復旧は着々と進められている。台風から10日後の9月14日には橋桁の撤去が完了し、来年のゴールデンウィークまでに完全復旧を目指す。複数の関係者によると、事故原因の究明には1年近くかかる見通しだ。
(了)
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