2024年11月24日( 日 )

AI時代とベーシックインカム(BI)(中)

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大さんのシニアリポート第71回

 「人間は汎用的な知性をもち、将棋も会話も事務作業もこなせる。30年ごろには、人間と同じふるまいができる『汎用AI』開発のめどがたつと言われています。ロボットに組み込めば色んなことができ、人より安くて効率良く働けるなら企業はそちらを雇う」(朝日新聞 平成30年8月14日)と著者の井上智洋(駒澤大学准教授)は推測する。

 どういう職種がAIに取って代わられるのか、井上は著書で「スーパーなどのレジ係(97)、レストランのコック(96)、受付係(96)、弁護士助手(94)、ホテルのフロント係(94)、ウェーター・ウェートレス(94)、会計士・会計監査役(94)、セールスマン(92)、保険の販売代理店(92)、ツアーガイド(91)、タクシー・バスの運転手(89)…」(カッコ内の数字は%、『週刊エコノミスト』2015年10月6日号を基に作成)。つまり、これらの職業が近い将来AIに取って代わられる可能性が高いということだ。人間に残る仕事は、「小説を書く、新商品の企画を考えるといったクリエーティビティー系。工場管理、会社経営などマネジメント系。看護師などホスピタリティー系」「仕事をして十分な所得があるのは、1割くらいのスーパースター労働者だけになるのでは。『脱労働社会』ですね。スーパースター労働者と資本家がめっちゃもうかるようになる社会です」(朝日新聞同日)という。

 働かなくとも食べていけるのなら、人間は怠けものになってしまうのではという心配に対して、「高度にAIが発達したら、人間は怠けていても別に問題ないでしょう。(中略)人間はあらゆることを意思でコントロールできるものではない。いま働いている人は、たまたま労働意欲や能力に恵まれてラッキーってことですよ」(同)。井上は労働が人間の本質であることをやんわりと否定する。「国民に労働をさせて国力を高めることが、国際競争のなかで必要だった。とくに日本では、憲法に勤労の義務がある。それくらいこの国では、労働に重みがある」(同)。確かに戦後日本のめざましい復興を支えてきたのは「労働」であった。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

(71・前)
(71・後)

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