AI時代とベーシックインカム(BI)(後)
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大さんのシニアリポート第71回
「LGBTは生産性がない」と寄稿した杉田水脈衆議院議員。平成28年7月26日未明、相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」で「障がい者は生きる資格がない」と多くの障がい者や職員を殺傷した元職員の植松聖。平成27年から翌年にかけ介護施設「Sアミューユ川崎幸町」で入所者3人を階段から投げ落として殺害した元職員今井隼人。昭和58年2月、横浜市内で起きた路上生活者殺人事件。犯人は20歳未満の少年たちで、「汚い浮浪者を始末してやった。町内美化に協力してやった。清掃してやったのに、なんで文句をいわれるのか分からない」という内容の話をした事件。共通するのは、「はたらくことこそが人間の義務であり、それをはたしていない人はダメだ、という見方と共通の背景を感じます」(同)という井上の意見に同感する。
日本では「働かざる者食うべからず」という意識が強く、労働に高い価値を置く。労働することへの対価として賃金が支払われ、それが家族の生活を支える根本をなす。職種や企業のヒエラルキーが賃金の格差をうみ、肩書きの上下が人間としての‘存在意義と序列化’をうんだ。それは退職後もひきずる。地域社会の円滑な営みを妨害するのもソレである。
「働く以外にもすばらしいことはあるし、生きているだけで貴いという価値観に変えていかないといけないんですよ。遊んで暮らすもけっこう、くらいにゆるい社会にならないと、今でも生きづらさを感じている人は多いし、ますますそうなってしまいます。労働以外のことに意味や価値を見出している人の生き方も肯定していかないと、立ちゆかなくなります」(同)
「BI」は「国民配当」という意味で使われることがある。「たとえばイランやアメリカのアラスカ州などでは、政府が石油などの天然資源から得た収益を国民に分配しており、これもBI的な制度として位置づけられる」(『AI時代の新・ベーシックインカム論』)といい、すでにカナダやオランダなどでは州政府や都市単位で実験的に模索が始まっている。フィンランドでは、2017年1月から2年間(失業者2,000人を対象に)行われている。毎月560ユーロ(約7万円)が支給される。「日本の制度では、雇用保険の失業時の手当は再就職すると打ち切りになる。生活保護も、収入が増えれば減額される。このため、暮らしに必要な収入が得られる仕事でなければ『働かない方が有利』と受給者が判断してしまうケースが想定される。ベーシックインカムは、こうした既存の社会保障の問題点の解決策になる可能性がある。就労促進の効果に加え、起業や、キャリアアップのために学び直す決断が容易になる効果も見込まれる」(朝日新聞 平成30年8月14日)。複雑な社会保障給付を見直すことで簡素化され、行政のスリム化が可能になり、結果として諸経費の削減につながると指摘する。子どもから高齢者までまんべんなく支給されることから、少子化に歯止めがかかるともいわれる。AI介護ロボットを含め、結果として求められる「BI」を、注視していきたい。
(了)
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