躍進するカンボジア・視察レポート(1)~急速なモータリゼーションの弊害
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東南アジアのインドシナ半島の南部に位置し、東はベトナム、北はラオス、西はタイと国境を接する「カンボジア王国」(通称:カンボジア)。国土の東部を東南アジア最長のメコン川が悠々と流れるほか、中心部には東南アジア最大のトンレサップ湖を擁し、広大な平野部で形成される同国は、面積は日本の約半分の約18.1万km2。人口は約1,625万人(2018年IMF推定値)。
かつてのクメール王朝の栄華を今に伝える「アンコール・ワット」や「アンコール・トム」などの世界的に有名な遺跡群を有し、観光地としてのイメージが強い同国だが、現在は首都プノンペンを中心に次々と高層建築物や大型商業施設などが建設。近年は外資による開発が活発に進められており、豊富な若年労働力と安価な労働力を武器に、しばらくは経済成長率7.0%程度を見込むなど、一躍、著しい成長を遂げつつある。
一方で、決して忘れてはならないのが、同国は過去に、独裁者ポル・ポト率いる武装組織「クメール・ルージュ」政権下による大量虐殺のほか、長年の内戦による戦禍などで、当時の人口の約3割もの人々が命を落とすという悲惨な歴史を経験していることだ。1993年の内戦が終結して以降は、多くの国からの支援によって民主化と経済成長を実現し、今日のような姿へと発展を遂げてきたが、あちこちにまだ当時の爪跡が残されているほか、国民の大半は家族のうちの誰かが殺されているなど、内戦はいまだカンボジアに暗い影を落としている。とくにタイとの国境付近一帯には、無数の地雷が埋設されており、少しずつ撤去は進んでいるものの、今なお多くの人々を苦しめている。
日本とカンボジアの国交60周年を迎える2013年4月に設立された「西日本・カンボジア友好協会」。同会では、福岡を始め九州、西日本地区とカンボジアとの相互理解を深め、友好を促進することにより、経済・文化の交流、発展に寄与することを目的として、これまでにさまざまな活動を行ってきた。
そのうちの1つが、現地法人や関係機関を通じて経済や文化などの見識を深めて人脈を広げることと、両国間の相互理解を深めて友好関係を促進することを目的とした「カンボジアビジネス視察ツアー」。その第8回目が、今年10月下旬に開催された。
今回、筆者もこの視察ツアーに参加した。ツアーでは、首都プノンペンや観光都市シェムリアップ、さらには地雷原の中学校などを訪問。今回のツアー中に見聞きしたこと、実際に肌で感じた現地の様子などについて、複数回にわたって視察レポートをお届けしたい。丸一日かけて、首都プノンペンに到着
ツアー初日の10月21日朝、福岡空港国際線ターミナルに集合した一行は、まず初めに、団長の戸田康一郎氏(西日本鉄道(株)取締役)の下、今回の視察団の“結団式”を挙行。戸田団長のほか、(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長・大谷賢二氏の挨拶もあり、各々が今回のツアーへの期待を膨らませていった。
今回の参加メンバーは、福岡の地場企業を中心とした16社から計19名(現地で1名合流)。過去に何度もカンボジアを訪問したことのあるベテランもいれば、筆者のようにカンボジア初体験の者もいるなど、それぞれ個性豊かで賑やかなメンバーとなった。朝10時半発の便で福岡空港を出発した一行は、空路で約5時間かけて、ベトナム最大の都市ホーチミンにある「タンソンニャット国際空港」に到着。残念ながら現在、福岡空港からカンボジアまでの直行便はないため、途中、ベトナム・ホーチミンを経由してのカンボジア入りとなる。ホーチミンでの乗り継ぎでは、搭乗予定の便が遅れて思わぬ足止めを食らうというアクシデントがあったものの、それ以外はとくに問題なく、カンボジアの首都プノンペンにある「プノンペン国際空港」に無事到着した。
当初の予定より遅れたことで、着いたときには現地時間ですでに夕方6時を回っていた。日本からカンボジアへ行った場合の時差は、プラス2時間。つまり、福岡を出発してから、すでに10時間近くが経過していることになる。空港に降り立った団員たちは、各々カンボジアへの入国手続きを終えた後、現地ガイドと合流。貸し切りバスに乗り込み、夕食をとるべく、プノンペン市街地へ向かった。
いきなりの追突事故!?
――と、空港を出たのも束の間、突如としてバスが道の真ん中で停止した。すぐさま運転手がドアを開け、そのまま車外へと出て行く。「一体何ごと!?」と、バスの車内に動揺が走った――。
やがて、事情を把握すべく車外に出て行ったガイドが戻ってきていうには、車内にいた我々には特段衝撃は感じられなかったものの、「バスが後ろから他の車に追突された」とのことだった。
それにしても、プノンペンの交通事情は凄まじい・・・。
カンボジアの道路は日本と違って右側通行であり、走行している車も左ハンドル車ばかり。道路上には、あまたの自動車が走り、その隙間を縫うように、二輪車やトゥクトゥク(三輪タクシー)、さらには自転車や移動屋台までもが走っている。
カンボジアでは現在、急速なモータリゼーションの進行による弊害として、とくに都市部では渋滞が慢性化している。また、125cc以下の二輪車を運転する際に免許の取得が必要ないこともあり、右折しようとする車を右側から数台の二輪車が追い越していくなど、交通マナーの普及はまだまだの状況だ。一応、交差点には信号があり、さすがに赤信号では止まるようだが、それ以外の運転――たとえば車線変更や追い越し、進路妨害など、基本的には“先に行った者勝ち”のやりたい放題といっても過言ではないだろう。
そうした交通事情であるから、現地ガイドの話によると、プノンペン市内を車で移動する場合、渋滞の有無やその度合いによって、到着時間がまったく異なるという。日本国内では“運転が荒い”ことで有名な福岡市内の交通マナーでさえ、カンボジアに比べると、何と“お上品”なことだろうか――。
さて、我々のバスの運転手はその後、バスを路肩に寄せて、衝突してきた相手の運転手としばらく話し合いをしていたようだが、我々のスケジュールを気にしてのことだろうか・・・。結局は、先を急ぐために相手に賠償請求することなく、泣き寝入りとなった模様だ。
老舗レストラン&5つ星ホテル
この日の夕食は、老舗のカンボジア料理レストラン「クメール・スリン」でいただいた。プノンペンの中心部に位置する同レストランは、外観も内装もカンボジア調にしつらえられており、オシャレな調度類やトロピカル植物で飾られ、異国情緒たっぷり。カンボジアに精通している大谷氏が、自信をもっておすすめするレストランだという。
レストラン2階に案内された我々が席に着くと、目の前のテーブルにはエスニックな味付けのカンボジア料理が並ぶ。筆者にとっては初体験となるカンボジア料理だったが、印象としてはタイ料理に近い。エスニックな辛さがアルコールによく合い、暑さも相まって飲み物がぐいぐい進む。和やかな雰囲気のなか、団員同士の会話も弾み、非常に楽しい夕食となった。この日の宿は、メコン川とトンレサップ川の間にある半島の突端に位置する「ソカ プノンペン ホテル」。14年12月にオープンした、地上20階建て・全523室の同ホテルは、大型屋外プールにレストラン、バー、スパ、フィットネスセンター、ビューティーサロンなど多くの施設を備え、“5つ星ホテル”の名にふさわしい豪華なホテルだ。川を挟んだ対岸には、プノンペン王宮や高層ビルが立ち並ぶ煌びやかな夜景が望め、景観も申し分ない。
ホテルに到着したのは、現地時間の夜10時過ぎ。日本時間で考えると、すでに日付が変わっている時刻だ。ほとんどが移動だけとはいえ、さすがに団員各人ともに疲労の色がうかがえた。こうして、視察ツアーの1日目が終了した。
(つづく)
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