躍進するカンボジア・視察レポート(4)~旺盛な不動産開発&新旧の商業施設
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カンボジア人のたくましさ
視察ツアー3日目。この日、最初に向かったのはプノンペン市内の中心部、シアヌーク通りとノドロム通りが交差する環状交差点の中央に位置する「独立記念塔」だ。
「独立記念塔」は、カンボジアが1953年にフランスからの独立をはたしたことを記念して、58年に建立されたモニュメント。カンボジアの伝統的な建築様式でつくられた赤褐色の石塔の側面には、インド神話に起源をもつ多頭の蛇神「ナーガ」が周囲を取り囲むように配置されており、カンボジア国旗にも描かれているアンコール・ワットの中央祠堂の尖塔を彷彿とさせる。塔の周囲は道を挟んで都市公園になっており、市民や観光客の憩いの場にもなっているようだ。
せっかくなので、我々もここでバスを降り、独立記念塔をバックに記念撮影を行うことにした。現地ガイドにカメラを預け、整列する。すると、カメラを構える現地ガイドの横で、見知らぬカンボジア人がカメラを構え、我々を撮影しているではないか。「誰?」――と思うのも束の間、撮影を終えた彼は、カメラのメモリーカードらしきものを仲間と思われる女性にわたすと、その女性がどこかに走り去っていってしまった。
「いったい何だったのだろうか!?」――という我々の疑問は、その後、すぐに明らかになる。しばらくすると、先ほどの女性が我々に走り寄ってきた。その手には、B5サイズほどの大判にプリントされた我々の記念撮影写真が掲げられており、それを差し出しながら「2ドル!」という。なるほど、そういうことか。
日本の観光地などでも、「記念写真を撮りますよ。できあがった写真を見て、もし気に入れば、購入をご検討ください」というようなビジネスモデルがあるが、それをもっとたくましく、かつ厚かましくしたものといってよいだろう。何せ、断りもなく横から勝手に記念撮影を行い、それを写真プリントして売りつけようというのだから・・・。
とはいえ、できあがった写真はなかなかキレイで、日本の観光地価格と比べて非常に良心的な値段設定だったため、一行のなかには思わず財布の紐が緩んでしまった人もいたようだ。なお余談だが、この独立記念塔の道路を挟んで向かい側には、現首相であるフン・セン氏の立派な邸宅があるが、その隣にあるのは何と「北朝鮮大使館」だ。実は、カンボジアは日本と違って北朝鮮との国交がある国であり、故シハヌーク国王の時代から友好関係にあるという。ただ、それにしても、一国の首相の邸宅に隣接して大使館を構えるとは・・・。カンボジアと北朝鮮との蜜月ぶりが、垣間見えた思いだ。
活況に沸く不動産開発
次に我々が視察したのは、プノンペンの不動産開発の状況だ。
ここ数年、カンボジアでは国外からの投資による建設ラッシュが続いており、首都であるプノンペンではそれがとくに顕著。地価も年々上昇しており、市内でも外国駐在員が多く集結していることで一等地と呼ばれる「ボンケンコンエリア」や、繁華街の「リバーサイドエリア」では不動産投資も活況で、大型レジデンスや複合施設などが続々と建設中だという。
今回、我々は神奈川県藤沢市に本社を置く富士リアルティ(株)カンボジア支店の海外事業部部長・松本憲幸氏の案内の下、2件の物件を見学させていただいた。
まず1件目として訪れたのは、プノンペンの中心部に位置する、その名も「オリンピアシティ」という大型コンドミニアムだ。ここはその名の通り、市内で最大級の多目的スタジアムである「オリンピック・スタジアム」に隣接しており、4棟のマンション棟のほか、商業オフィスビルやショッピングモールなどで構成される、住宅総戸数2,300戸の大規模高層開発プロジェクトとなっている。デベロッパーは、住宅を始めホテルやショッピングセンターなど大型案件を数多く手がけるカナディア財閥系の建設会社「OCIC」(Overseas Cambodia Investment Corporation)で、現地の駐在員やカンボジアの富裕層を主なターゲットとしている。
実際に内部を見せてもらうと、ホテルと比べても遜色ないようなオシャレな室内となっている。案内してもらった部屋は少々狭い間取りだったが、それでも、仮に日本人駐在員がプノンペンで単身赴任をするとなれば、十分すぎる設備だろう。共用スペースにはバーラウンジやフィットネス施設、キッズスペースなども備えられており、見学する視察団一行も感嘆の声を挙げていた。
なお、複数の棟からなる「オリンピアシティ」だが、我々が隣の棟に案内してもらう際に通ったのが、床面がガラス張りで下が透けて見える連絡通路だった。下の地面までの距離は、ざっと十数m以上はあるだろうか・・・。こう言っては何だが、何となくガラスの強度などの施工面の不安もある。少々、高所恐怖症気味である筆者としては、内心ビクビクしながら、恐る恐る渡ったことはいうまでもない。
もう1件見学したのが、高層コンドミニアム「ザ・ペントハウスレジデンス」だ。こちらは、前述のリバーフロントエリアに位置する36階建て・全458戸の高層コンドミニアム。同物件の道路を挟んで向かいには、2014年6月にオープンした「イオンモールプノンペン」があり、非常に利便性が高い。
こちらも内部を何部屋か見せていただいたが、先ほどのオリンピアシティより、それぞれの間取りがやや広く、ファミリー層を意識したつくりになっているように感じた。部屋のベランダから外を見ると、眼下にすぐ「イオンモールプノンペン」があり、たしかに買い物に不自由することはなさそうだ。視察団一行のなかには、今にも買いそうな勢いで真剣に物件を物色していた人もいたとかいないとか・・・。
なお、今回見学させてもらった物件とは関係ないが、カンボジアにおいてはプロジェクトの進行中に物件の建設がストップするケースもあるといい、手がけているデベロッパーによって、投資するか否かの選択を慎重に検討すべきだという。たとえば、韓国系の企業が08年に建設を始めた「ゴールドタワー42」では、その企業の倒産によって建設工事が中断し、その後も再開と中断を繰り返しながら、建物は約10年にわたって放置。今年に入ってようやく建設が再開されたというが、まだ完成には至っていない。このように、せっかく投資した物件が、完成しないまま中断を余儀なくされ、挙句、放置されてしまっては、目も当てられまい。そのため、カンボジアでの不動産投資においては、どのデベロッパーが開発しているかを踏まえたうえで、投資の可否を見極めることが重要となる。ちなみに、松本部長がいうには、日本企業や台湾企業などのデベロッパーの信頼がとくに高いという話だった。
地元民の御用達の「セントラルマーケット」
次に一行が訪れたのは、プノンペン市内で最大規模の市場である「セントラルマーケット」だ。
ここは、1930年代に建てられたというアール・デコ調のドーム状の建物を中心に形成されたローカルな市場。ドームを中心として十字型に四方へと伸びる通路に沿って、観光客向けの土産物屋などが軒を連ねているほか、ドーム内の中心部ではショーケースに入れられた宝石類や高級時計などが煌びやかに並ぶ。かと思えば、通路脇に日用品や衣類、調理器具、電化製品などが、日本の「ドン・キホーテ」の“圧縮陳列”を彷彿とさせんばかりに積み上げられているほか、外周部には野菜や魚介類、肉などの生鮮食品などが無造作に並べられ、その近くでは地元民たちが屋台料理に舌鼓を打ちながらくつろいでいたりする。いかにもアジアらしい、雑多な活気と喧騒に満ち溢れた場所だ。
ここで我々は少しの時間だが、ローカルな市場の雰囲気とともにショッピングを楽しんだ。筆者も、日本で帰りを待つ妻のために、ここで何かカンボジアらしい土産物を探すことにした。目をつけたのが、道中のバスのなかで紹介されていた、スカーフのような「クロマー」といわれる伝統的な万能布だ。
「クロマー」は、スカーフのように使うほか、頭に巻きつけて日差しを防いだり、タオル代わりに使ったり、物を包んでバッグのように使ったりと、使い方はさまざま。値段も手ごろなため、お土産物として人気が高いという。ちょうどセントラルマーケットの入り口近くの土産物店に色とりどりのクロマーが並んでいたため、ここで物色することにした。
ここセントラルマーケットでは、商品のほとんどには基本的に値札が付いておらず、店の人の言い値。もちろん、店によっては“ぼったくり”の可能性もあるが、同時に値下げ交渉の余地もある。筆者の場合はあまり交渉力に自信がなかったため、ツアーメンバーに便乗するようなかたちで、数点のクロマーや扇子などを購入した。なお、このセントラルマーケットにおいては“エゲツない”ぼったくりはあまりなく、ある程度“良心的な”ぼったくり価格だというので、そこまで値下げ交渉に神経質にならなくともよいかもしれない。余談だが、ドーム中心部に煌びやかに並べられた宝飾品や高級時計については、高級時計はまず偽物、宝石類には“たまに”本物も混じっている、とのこと。宝石の目利きに自信のある方は、プノンペンのセントラルマーケットに足を運んだ際に挑戦してみると、思わぬ掘り出し物が見つかるかもしれない。・・・もちろん、保証はしないが・・・。
最新の商業施設「イオンモール セン ソック シティ」
セントラルマーケットを後にした一行が、次の目的地として昼食がてらに訪れたのが、今年5月30日にオープンしたばかりの「イオンモール セン ソック シティ」である。
ここは、前出の「イオンモールプノンペン」に次ぐカンボジア2号店となるショッピングモールで、プノンペン中心部の北部、カンボジアにおける巨大コングロマリット企業LYPグループが総合開発を進めている「Pong Peay City」内に立地。現地では、「イオンモール2」とも呼ばれている。
ここでは、総合スーパーである「イオンセンソックシティ店」を核店舗に、209店の専門店が入居。そのほか、室内遊園地やシネマ、コンサートホール、ウォーターパークなどからなるカンボジア最大のアミューズメントコンプレックスや、5つの銀行と14のATMからなるフィナンシャルゾーンなど、日本のイオンモールと比べても、何ら引けを取ることのない充実ぶりだ。昼食は、イオンモール内の中華レストラン「魚生(イーサン)」で、点心や麺類など、日本で食べるものとほとんど変わらない中華料理をいただいた。ただし、店員の接客レベルは、まだまだこれからといったところか・・・。
昼食後、少しの時間だがモール内を散策してみた。屋内に「フライングパイレーツ」などの大型遊具が備えられているほか、フードコートには、日本のうどんやラーメン、しゃぶしゃぶなどの店舗が並んでいる。専門店街には日系企業も多く入っており、ダイソーや紀伊国屋などを確認できた。核となるイオンのスーパーも、非常にオシャレで清潔感のある店内となっており、取り扱う商品も多種多様。つい先ほど見てきたばかりのセントラルマーケットと比べると、ここが同じプノンペン市内なのかと、その差異にとまどいそうになる。来店客も、外国人もしくは富裕層のカンボジア人がほとんどで、セントラルマーケットでよく目にしたような、いわゆる“地元のカンボジア人”といった姿は見かけなかった。
ここでも新と旧、光と影、貧と富など、変わりゆくカンボジア・プノンペンの「今」の姿がまざまざと感じられたように思う。なお、カンボジアにおいては現在、2023年の開業予定で、「(仮称)イオンモールカンボジア3号店」の計画が進められている。場所は、プノンペン中心部から南へ約8kmにある、多くのレジデンス、アパートメント、ヴィラなどの住宅開発が進行中で、今後さらなる人口増加が期待できるエリア。地元デベロッパーである「ING HOLDING社」が進めているプノンペンでの最大級のプロジェクト「ING CITY」の中核施設となる予定となっている。
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イオンモールを離れた我々一行は、初日に訪れた「プノンペン国際空港」に到着。ここでプノンペンに別れを告げ、空路でシェムリアップへと向かった。
(つづく)
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